取材趣旨:企業インタビュー
1977年に誕生した国土緑化株式会社。その誕生の背景には、創業者であり、今尚同社を牽引し続ける堺社長の並々ならぬ決意があった。堺社長は「造園業」を「植木屋」という従来のイメージから、「サービス業」へと転換させた第一人者。「緑による文化創造」を経営理念に掲げ、これまで業界の先駆者として、伝統を継承しつつもイノベーションを起こし続けてきた。現在、同社が手掛ける事業のメインは、「グリーンレンタル」と呼ばれるもの。法人や個人に対して、観葉植物等のレンタルを行うというビジネスモデルなのだ。今や年商15億円を記録し、市場そのものを創り出している同社。今回は、同社を牽引する堺社長より、同社の根幹や今後の展望についてお話を伺った。
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国土緑化株式会社
代表取締役堺 亜琉
高度成長期が終わる70年代後半、国会で公園の増設や、緑化の補助金制度などが取り上げられ、世間でも「エコ」に対する意識が高まってきた時代です。この様子を間近に見ていた私は、「緑化事業を手掛けてみよう」との思いを深めました。ビジネスの成長性はもちろんですが、何より「世のため、人のためになる」と考えたのです。
緑化事業について全くの素人、何から始めれば良いのか全くわかりません。そこで調査してみると、この事業には、「造園」や「生産」「生花販売」「貸植木」など様々な業態があることがわかりました。
職人の勘と経験で成り立っている旧態依然とした業界であり、閉鎖的な印象を受けました。そこで合理的な仕組みやサービス精神を持ち込めば、大きなイノベーションが起こせるかもしれない、そう思ったのです。
中でも「貸植木」は、植木屋さんが片手間でやるような内容で、とてもサービスや事業と呼べる代物ではありませんでした。私はすぐに「これだっ!」と確信しました。しかも、市場としては、競合らしき競合がなく、ブルーオーシャン市場でした。
また、社員が仕事に誇りを持てるよう、この事業に魅力を加えました。それは「植物をただ運ぶだけの仕事」ではなく、「お客様のニーズに適した植物を選び、コーディネートする」という「創造性の高い仕事」として事業を再定義したのです。さらに、呼び方を「貸植木業」ではなく「グリーンレンタル」とし、屋号を「グリーンポケット」にするなどイメージ刷新にも取り組んだのです。
これらの試みが功を奏し、売り上げは右肩上がりで伸び、国土緑化は成長軌道に乗りました。また設立からわずか10年でフランチャイズ事業を手掛けたことで、一気に全国展開までもが実現したのです。
目次
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
真面目に仕事に邁進する
「真面目」、そう堺社長は社風を表現する。「トップによって組織が変わる」、堺社長の口から飛び出した言葉であるが、ここで言うトップとは、社長はもちろん、部門長をも指し示す言葉である。社長をはじめ、各部門の長が、仕事に対して誠実一路であるからこそ、部下はそれを真似る。そういったプラスの連鎖によって同社の社風が形成されたのだ。例えば、出勤時間。なんと、始発で出社する社員もいるとのこと。活動時間が増えることはもちろん、仕事の段取りを朝に済ませることで、一日の仕事が円滑に進む。これは、会社で強制しているものではない。一人ひとりが仕事に対してプロとしての誇りと自覚を持っているからこその行動であり、日常の1シーンかもしれないが、主体的に仕事に取り組んでいることが現れている最たる例ではないだろうか。いわゆる「植木屋」から「サービス業」へと概念そのものを覆し、今日に至るまでの並々ならぬ努力があってこそのもの。その努力の背景には、「真面目」という社風が大きく関係しているのだ。
イノベーション文化
「イノベーションを起こし続ける文化」、それが同社の独自性。同社は業界の先駆者であり、取り組みのほとんどが「業界初」なのである。緑の従来用途は装飾。この装飾という概念を打ち破り、緑の設置は環境問題に対しても一石を投じることになるだろうと堺社長は可能性を見出したのだ。いわゆる「植木屋」を営む業者が装飾として設置するスタイルから、環境問題を切り口として緑の必要性を説き、緑溢れる社会を創っていくために、サービス業として立ち上げるに至った。それを皮切りに業界を根本から覆す取り組みを行っていった。植物は生き物である。環境が良くなければ、その商品価値の低下は必至。お客様へ植物を届ける上で、物流が必要になるが、温室によって品質を担保するストックヤードを建造したり、「グリーンマスター」と呼ばれる緑に関する資格制度までを同社が作り上げ、「緑」に関する関心を高めていった。まさにイノベーションを起こし続ける文化が同社最大の強みなのだ。
緑による文化の創造
「緑による文化の創造」、それが堺社長の掲げる経営理念であり、ビジョン。元々この思いが根底にあり、起業に至った堺社長。この思いはこれまでも、そしてこれからも変わることなく、堺社長、そして同社のDNAとして脈々と受け継がれていくものである。「緑による文化の創造」を果たすために、現在同社が力を入れているのが、フランチャイズシステムによる加盟店の増加と新たな商品の開発。同社の思いや取り組みに共感した加盟店を日本全国に増やし、グリーンビジネスの普及、そしてそれに伴い「緑」そのものが日常になくてはならない文化として根付かせていくことが重要となる。さらには、「緑」に関する新たな商品開発に対しても余念がない。文化創造のために、既存のサービス、商品のみならず、新しい商品を世の中に出していく、それが堺社長の考えなのだ。思いを根底に抱き、手法は柔軟に、同社の「緑による文化の創造」に向けた挑戦は続いていく。
創業社長が語る、強い決意
緑による文化の創造に向けて、堺社長が考える強化ポイントについて教えてください
人材育成ですね。「企業は人なり」という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。企業で働く人は、その人がいると周りにまで悪影響を及ぼす「人"罪"」、いてもいなくても変わらない「人"在"」、磨くことで光る「人"材"」、企業や周囲にとって価値をもたらす「人"財"」と表現されますが、1人でも多くの人を「人"財"」へと育成していくことがポイントになるでしょうね。当社の社員は可能性を秘めた社員ばかり。全員が「人"財"」として光輝き、共にビジョンを実現していきたいと考えています。社長がリーダーシップを発揮して引っ張っていけるのは良くて100名規模までだと思うので、部門長クラスのさらなる成長を期待しています。
堺社長の経歴と起業の経緯について教えてください
元々私は経営者を目指していました。大学卒業後はとある企業に入社したのですが、すぐにその企業から出向という形で、政治家の秘書をする機会がありました。その時に色々と勉強したのですが、国会の審議を聞いたことが今に繋がっていると思っています。当時、「日本に公園を増やそう」という議論がなされていたことを覚えています。そういった機会に立ち会うことで政治についての知識は増えていきましたが、やはり経済を知る必要があると思いました。社会に貢献し、皆様に喜んでもらえる、そういった仕事はないだろうかと考え、それを実現できるのが緑化事業と思い、当社を立ち上げるに至りました。
新卒採用を行っていますが、求める人物像について教えてください
前提として、当社の経営理念に共感していただける方、そして物怖じせずにガンガン攻めていけるような方が当社には適していると思います。当社は業界の先頭を走っていると自負していますから、開拓精神がないと、この仕事は務まりません。現在力を入れているフランチャイズの加盟店増加や新たな商品開発も、並大抵の努力では成し遂げることは難しいですし、日々、我々が行っている営業活動においても新規開拓のスピードをもっともっと上げていかなければ「緑による文化の創造」の実現のスピードが鈍化してしまいます。そういった同社において、志を同じくし、困難にも共に立ち向かっていける仲間が必要です。そのことから、前述したような方が当社には適していると考えています。共に切磋琢磨し、当社の未来を創っていきましょう。
イノベーションを巻き起こす本社ビル
緑に囲まれた社内風景
植物は生き物。マメな管理が重要
営業を極め、経営理念実現に貢献

国土緑化株式会社 営業開発部 マネージャー 山口 浩之
山口さんは新卒で同社に入社。山口さんは入社後、購買部における植物の買い付け、同社のビジネスをさらに展開するためのフランチャイズ加盟店の指導等、多様な経験を積んできた。現在は営業開発部のマネージャーへ就任し、その辣腕を振るい、営業組織を見事にまとめ上げている。同社が手掛けるグリーンビジネスは、まだまだ世の中に認知されていない分野である中、山口さんは試行錯誤を繰り返し、新規顧客の獲得に向けて精進をしている。同社が掲げる経営理念は「緑による文化の創造」。壮大な経営理念の実現の急先鋒を担うのが、新規営業である。その組織を牽引するのが山口さんなのだ。そんな山口さんに対して、仕事のやりがい、今後の目標等、様々な話を伺った。
伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い
他社とは違う、開拓者として仕事に魅力を感じ
山口さんの入社の決め手は、自らのアイデアを形にできる環境に身を置くことで、自身の人生の可能性に広がりを感じたことである。同社は造園業を従来の「植木屋」というイメージから「サービス業」へ転換した革新的企業。「普通とは違う面白い仕事に就きたい」と考えていた山口さんにとって、新たな挑戦の連続である同社の環境は、とても魅力的に映ったという。入社後は、通常のビジネスシーンのみならず、山口さん自身が指揮を執り、全社を巻き込む、クリスマスやお正月に向けた社内の販促キャンペーンを企画している。その販促キャンペーンは、今や部署の垣根を越え、社を上げて取り組む程の同社にとっては年に一度の大企画となり、恒例行事として欠かせないものとなっているという。学生時代に山口さんが思い描いていた理想は今や現実のものとなった。自分のアイディアを具現化することで、成長を続ける山口さんの目は、次なる目標を見据えている。
自らが作り出す、お客様の喜び
「お客様に喜びを提供する」、それが何よりのやりがいと話す山口さん。同社の主力事業である観葉植物のレンタルを導入しているお客様は1万社以上にもなる。その中で同社のサービスを導入するお客様のニーズ及び用途は様々だ。観葉植物を装飾として設置するお客様もいれば、仕切りとして活用するお客様、植物を使用しストレスフリーの実現を目指すお客様、環境への配慮から設置を試みるお客様もいる。多種多様なニーズ、用途の中、山口さんはお客様が何を求めているのかを考え抜き、そのお客様にあった提案をすることを大切にしている。その提案が、お客様の本当に求めているものと一致した時、お客様の最大の喜びに繋がり、何よりもその瞬間が仕事のやりがいであると山口さんは笑顔で話してくれた。お客様の中には他社のサービスから同社のサービスへ切り替えを実施することもあり、以前よりも良いとお客様に評価していただくことも仕事の醍醐味と山口さんは語る。お客様の喜び、それが山口さんの原動力になっているのだ。
営業、フランチャイズを通した緑による文化の創造
山口さんの夢は、営業を極めること。同社には自分の個性や強みを最大限に活かすため、専門分野に特化し極めていく風土がある。その中で、山口さんが最も得意とする分野は、現在担っている営業。営業中のお客様との会話の中で、お客様の本質的ニーズを掴み、固定概念に囚われずに柔軟な提案をすることが求められている。そういった難易度の高い営業活動において、一人の営業パーソンとしてのさらなる高みを目指して邁進を続けている。さらに、営業パーソンとしての仕事領域のみならず、同社が手掛けるフランチャイズの仕組みを用いて、より多くの人々にこのビジネスに対する認知度、関心度を高め、文化の創造をしていくという強い使命感を強く感じていることから、より多くの加盟店を増やすことを目標にしている。会社として、より多くの加盟店を増やすための活動や、加盟店がより発展するためのセミナー等を開催し、緑による文化創造に向けた活動に尽力している。同社の、そして山口さんの挑戦は続いていく。
「小さな森」の創造
営業シーン
サービス活用事例
国土緑化の経営理念実現に向けたキーマン
以前在籍していた購買部の仕事のやりがいを教えてください
私は営業部に配属になる前は、市場において植物の買い付けを行う購買部に所属していました。購買部時代は良い物を仕入れることが何よりやりがいでしたね。競りが開催されるのですが、そこが腕の見せどころとなります。良いものをいかにリーズナブルに仕入れることができるか、すべては自分の手腕にかかってきます。植物は生き物なので、季節によって一つひとつ形が違う中から、理想により近いものを目利きし、それを競り落とすことは快感になりますね。自分の周りはベテランの方々ばかりという状況で、プレッシャーももちろんありましたが、正解がない中で、日々模索しながら仕事に邁進した経験は、今でも貴重な財産として自分の中に根付いています。
国土緑化の良いところを教えてください
当社の良いところは、好きな仕事に没頭できることだと思います。当社で働く社員は自身の仕事に誇りを持っていますし、観葉植物が大好きで、時間も忘れて仕事に没頭する社員ばかりだと思います。自分の仕事に誇りを持ち、自社のサービスを愛しているからこそお客様に自信を持ってサービスを勧めることができていますし、その姿勢があるからこそ、お客様は当社が掲げる経営理念に共感してくださっていると私は思っています。私自身、仕事に没頭するあまり、朝から夜中まで働いていることがしばしあります(笑)。この思いはこれからも当社の良いところとして残していきたいですね。
「緑による文化の創造」という理念について、山口さんの考えを教えてください
多くの人にとって「緑」が生活の一部として欠かせないものへと認識を変えていきたいと考えています。現在、「緑」に重きを置いて生活している人はそんな多くはないと思います。食や衣服と違ってなくても事足りるものが緑だと思います。そんな常識を私は変えていきたいと考えています。緑は心身の健康にもとても効果的なものですし、環境にとっても良いものであることは間違いありません。将来的には、緑が当たり前にある生活、そういった環境を創出したいと私は考えています。そのためにも、現在行っている仕事に一生懸命取り組み、緑による文化創造に尽力していきたいと考えています。
担当者からのコメント
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監修企業 担当者
堺社長とお会いして感じたことは、これまでの豊富な経験からなのか、
重厚感のあるオーラをまとっているように感じました。
実際にお話をさせていただくと、とても人間味にあふれていらっしゃり、
「緑による文化の創造」という一点を見つめて、経営をなさっていることがひしひしと伝わってきました。
業界初となる試みを次々に繰り出し、一代で国土緑化を築き上げて堺社長のお話は
とても感銘を受けるものばかりでした。ありがとうございました。
掲載企業からのコメント
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国土緑化株式会社 からのコメント
取材をしていただき誠に有難うございました。 改めて原点を見つめ直し、これからも精進して経営理念を実現していく所存です。 何かの縁で当社に集った仲間達と、これから作る未来を非常に楽しみにしております。
企業情報
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創業年(設立年)
1977年
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事業内容
総合緑化事業 観葉植物のレンタル 生花販売 造園・解体工事 緑のレンタルFC「グリーンポケット」本部の運営
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所在地
東京都江戸川区中央2丁目1番21号
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資本金
8,000万円
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従業員数
68名
- 会社URL
沿革
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1977年~1996年
1977年
東京都江戸川区松島にて、グリーンレンタル事業、造園事業を主たる業務として設立
1984年
生花事業スタート
1988年
緑のレンタル「グリーンポケット」フランチャイズ事業スタート。加盟店1号店オープン
1996年
愛知県に加盟店オープン。中部地方へ展開 -
2000年~2012年
2000年
大阪府・岡山県に加盟店オープン。近畿地方・中国地方へ展開
2001年
中央区日本橋に日本橋KRビル取得。営業開発部・フラワーショップ華曜日を移転
2007年
江戸川区中央に本社社屋完成
2012年
一般建設業、特定建設業の許可取得
取材趣旨:企業インタビュー