日本が誇る伝統と挑戦の革新企業

取材趣旨:企業インタビュー

下町、葛飾。人情味があり、喧嘩っ早い江戸っ子、活気あふれる町中。そのような様子がこの町の特徴だ。その葛飾の地に、若さとたゆまぬ挑戦で、現在も当時に勝るとも劣らない活気を持ち、伝統を創り上げてきた企業がある。それが今回取材をさせていただいた三正工業株式会社だ。同社は半世紀以上に渡り油圧機器の製造で発展。そのような同社もリーマンショックの頃は相当な危機を迎えたそうだ。それでも人を切らず、乗り越え、今があるという。なぜ乗り越えられたのか、それを支えた同社ならではの強みは何か。社員からも信頼熱い岸社長に話を伺った。

  • 三正工業株式会社

    代表取締役岸秀世史

    私たちが供給するのは、ミクロンオーダーの加工精度を要する部品ですが、これらが組み込まれる産業機器は世界中のあらゆる場所で大きな力を発揮し、なくてはならない存在です。新幹線の制動装置や建設機械、工作機械の内部に私たちの技術が息づいています。「大きな力を支える小さな巨人」として三正工業は日々邁進していきます。

目次

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

社風

若さと刺激で常に活発な組織へ

今、転換期にあり、若い人財の採用・育成に力を入れている同社。日本の製造業に携わる人々の平均年齢が約40歳なのに対し、同社の社員の年代別割合は20代、30代が半数以上を占めている。また、機械設備にも積極的に投資を行い常に新しいものを使っているという。「弊社は若く、代謝の良い、柔軟な社風ですよ」と岸社長が語るように、変化の激しい現代に合わせ、積み重ねてきたものを大事にしながらも、常に刺激を加え、代謝していくことを大切にしているのだ。このようにして、会社を活性化させていくことが成長の要因になっているそうだ。近年ではベトナム人研修生の受け入れも積極的に行っているという同社。「ベトナム人の子達は非常にハングリーで、お金を稼ぐために休まないですし、必死に努力をします。これが弊社で働く日本人社員に良い刺激を与えてくれています」現状に留まらず刺激を加えることで変化、進化をしていく風土が、同社ならではの新しいアイデアや技術に繋がっているのであろう。

独自性

先手を仕掛ける先を見据えた経営

先手を仕掛ける先を見据えた経営、これこそが同社の独自性だ。実は若手の採用や育成に力を入れている今の取り組みも、この岸社長の先見の明によるもの。日本の少子高齢化の流れを就任当時に敏感に察知し、同社の今後の存続と発展のためには若い人財を積極的に採用していかなくてはいけないと考えてのことだったという。そして近年ではワンストップサービスを展開し、複数の部品をパーツごとに注文するのが面倒という煩わしさをひとつにまとめることで、新たな付加価値を生んでいく。「正直つくっているものは他社と大きく変わらないです。だからこそ付加価値を高める企業でなくてはいけないと思いました。どこまで対応できるかの枠組みを広げることで市場が広がるし、今後の選択肢も広がる」そう語る岸社長。例え、歴史がある企業でも時代の荒波に飲みこまれてしまうこの時代。時代を先読みし、先手を仕掛ける同社の挑戦が楽しみだ。

展望

顧客のグローバル化

「今後はマーケットを海外に拡大していきたいですね」そう語る岸社長。BRICsをはじめとした、近年経済発展の目覚ましい国々や、東南アジアの発展途上国にこそ同社の更なる可能性を見る岸社長。「今国内は部品の価格をいかに下げるかというところにばかり目がいっています。でも製造原価は下げるにしろ限界があります。弊社は人件費を削る気は毛頭ありません。であればマーケットの拡大を視野入れざるを得ない。ニーズは何も国内だけじゃない」そう語る岸社長。ベトナムの現地法人をその足掛かりとし、着々と海外進出の準備を整えている現在。日本の技術を求める海外諸国は多く、三正工業だからこそ出来るその技術でニーズに応えていくことで同社は更なる発展を目指している。「目指すは3年以内に売上15億円です」そう語る岸社長の目は虎視眈々と先を見据えていた。

社として、個人として大切にする考え

乗り越えてきた苦難についてお聞かせください

私は3度の苦難を経験しました。そのいずれの時も固く誓っていたのは人員の削減を絶対にしないことです。平成バブルの崩壊、ITバブルの崩壊、そしてリーマンショックとありましたが、とりわけリーマンショックは苦労をしました。一番過酷でしんたね。予測ができず打つ手が後手になり、売り上げは下がる一方で上がる見込みは立たない。当時、苦肉の策で1勤6休のシフトを組んだこともありました。私の想いとしても絶対に人を切りたくなかったので、もうなにがなんでも、でしたね。結果としてそれが今に生きていまして、その後順調に業績を伸ばし、仕事が増えたのも、優秀なメンバーが残ってくれていたからこそです。やはり弊社の財産は社員であると改めて思いますね。

御社の経営で大事にしている考えを教えてください

安定・安心・安全ですね。私はこれを3Aと呼んでいます。この3Aの経営を心掛け、社員に常に発信しています。会社は従業員のものです。従業員を幸せにするためには、会社が安定していて、安心できる環境で、安全な場所でなくてはいけません。なのでこの安定・安心・安全の3Aが大切であると切に思います。一方で、社員にも意識をしてもらっていることがあります。それは社員も会社を守ること。一人ひとりがこの意識をもって業務に取り組めば、どんな局面でも乗り切れると確信しています。懐かしいですが、苦難に陥った時に、全社員に「会社は皆を守ります。だから皆も会社を守ってください」と発信ましたね。そして危機を乗り越えた。今後もこの考えのもと、全社員で弊社を発展させ続けます。

岸社長個人が大切にしている考え方を教えてください

出来ない理由を探すのではなく、出来る方法を探す。これに尽きますね。死ぬ気でやれば発想が出てきます。そして、100%の仕事をし続ければ120%の仕事ができるようになっていきます。このサイクルを回し、常に常に自分を高めていくことを心がけています。この姿勢を社員に見せ続ければ、社員も同じ姿勢で仕事に取り組んでくれますしね。過去の苦難を乗り越えられたのも、この考え方があったからこそだと思っています。出来ない理由はたくさんあれど、出来る方法がなかなか見つからなかった。それでも出来る方法を模索し、実行してきたからこそ、今の三正工業があります。この考え方はこれからも、弊社の軸たる考えの一つとしていきたいですね。

  • ヴェトナム人研修生との富士山旅行

  • 関西機械要素展に出展した同社

  • 同社の技術力がきらりと光る

気の仕事

正工業株式会社 生産管理課 中島正考

社の生産管理課としてご活躍されている中島さん。中島さんは現在、お客さん相手の営業や、製品の納期の調整、製造の工程の設計など扱う業務は多岐にわたる。その中島さんの管理力、その采配は社内でも評判が良く、社を代表する人間の1人と言っても過言でない。だが、入社当初はただ、何気なく入社したとのこと。入社後の岸社長との出会いを通じて、自分を磨き、日々成長を重ねていったという。そして成長の環境を与えた同社に恩返しするべく、社内の釣り部を立ち上げるなど、中島さんならではの価値を発揮し日々務めている。本取材ではそれらのエピソードについて伺っていった。

伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い

入社理由

本気の仕事に感化され

求人の条件が良かったことをきっかけとして何気なく同社に入社した中島さん。しかし入社するやいなやとてつもない量の仕事をすることになり大変であったと、当時を懐かしそうに語る。その大変な時期の突破のきっかけとなったのは岸社長の姿。もやもやとする気持ちを抱えながら仕事をしていた時、岸社長の常に100%の仕事をする姿勢を見て衝撃を受けたそうだ。「このままではいけない、自分も同じ姿勢で仕事をしなくては」と自らを鼓舞したという。「気持ちを入れ直して、本気で業務にあたりましたよ」そう気恥ずかしそうに語る中島さん。「現場で本気になって仕事をした経験が今の管理業務にとても活きています。あの時、本気で現場の仕事をしたからこそ今の充実している自分がありますね」何気なくであった、同社との出会いは、中島さんの人生に今までにない充実感をもたらす出会いとなったに違いない。

やりがい

より良いものをお客さんに

管理業務を行いながら、お客さんへの営業も行っている中島さん。元来、人付き合いが好きだという中島さん。相手の気持ちを尊重して、小さな反応を敏感にキャッチする姿勢はお客様からの信頼獲得に繋がっており、そこで得たヒントをもとに提案していくことにやりがいを感じているそうだ。「僕の強みは提案力だと思っています。相手が何を求めているのかを常に考えていますね」と語る中島さんの常々意識していることはお客さんの求めるものを提供するために、まずはあえてすべてを疑うこと。「例えば材料の鉄にも、硬さや伸びの違いがあって、たくさん種類があるんです。お客さんから要望があった時には、僕はそこから見直しますね。その結果一から全部変えることもあります」こうして中島さんは、お客さんに対して中島さん独自の視点で、中島さんにしか提供できない付加価値をお客さんに提供している。「そうやってお客さんと本気で向き合って改善がなされたときはとてもやりがいを感じますね」今後も中島さんならではの価値を発揮し、活躍を続けるに違いない。

永続する企業へ

「僕はこの会社を永続させたいんです。弊社は今約50年の歴史がありますけど、まずは倍の100年、ここを目指します」そう力強く語る中島さん。そのために中島さんは常に社内に変化をもたらすことを心がけている。これまで自社に釣り部をつくることや、小集団活動の提案をし、実行に移すなど、積極的に働きかける背景には中島さんならではの想いがあった。「100年続く会社になるためには、利益や売上ももちろんですが、何気ない楽しさも重要だと思っています。そう考えた時に、僕の子供時代の輪を作って、皆でその場その場を楽しくしたいという想いを思い出しましたね」「何事も楽しくなければ続かないと思います。そのためには変化は必須だとも思います。例えば友達付き合いでも同じことばかりしていたらマンネリしますよね」三正工業を100年目まで存続させるために、社内環境という面からもアプローチを行っている中島さん。会社のために、自ら率先して行動を仕掛ける。中島さんのような方がいるだけでも、素敵な会社であるということが伝わってくる。

  • 島さんの立ち上げた「三釣会」

  • 後の歴史を作る同社の製品

  • イベントの充実している同社

中島さんの仕事への想い

御社に入社した当初からの心境の変化をお聞かせください

自分の価値観だけで判断するのは勿体ないと思えるようになったことですかね。物事を「出来ない」と言ってしまえばそこで終わりですけど、視点を変えれば簡単に出来るようになることって意外と多いと思えるようになりました 。特にお客様への提案をする際に感じます。今は材質からすべてを疑って、よりお客様の要望に応えられる糸口はないかと自然に考えられますが、以前であればお客様の想定している材料の中だけで考えていました。このような考え方ができるようになったきっかけを、社長の仕事への姿勢から教えていただけましたね。今後も仕事に生かして恩返しをしていきたいですね。

お客様と接するうえで意識している事を教えてください

無駄な情報はないと思ってお客様と接することですね。これを第一に考えています。情報を頭の隅に入れておけばお客様の要望に敏感になれますね。例えば以前、お客様とお話をしていた際、ふとした拍子に「出来るだけ軟らかい鉄を探している」と仰ったんです。それを機に何に使いたいのか、どうして探しているのかをお伺いして、そのお客様とは新たな取引が始まりました。もし私の主観で、こういった些細な情報を捨ててしまっていては、きっと話も膨らまなかったと思います。私にとっては些細でもお客様には大切な想いが隠されているかもしれない。そうやって接することが本当に大切です。

岸社長の印象を教えてください

とにかく有言実行です。例えば、これは今年の話なのですが、年始に「今年は大口の企業を2社お客様にする」と宣言したんです。そうしたら社長は本当に大口の企業を2社お客様にしたんです。あれには驚きましたね。他にも社長が言って本当にそうなったエピソードはたくさんありますね。その姿を見て、自分が発した言葉に責任を持つこと、そうやって自分を追い込んで結果を出していくことをここ最近意識しています。そうやって僕は社長のように頼られる人になりたいです。自分が頼られる人間になるためには有言実行の姿勢を貫くことが1番なのかなと、社長を見て、勉強させていただいております。

担当者からのコメント

  • 監修企業 担当者

    とても活気のある、管理の行き届いた企業様です。同社のオフィスは整理整頓が徹底され、同社の社員アンケートが見える化されており、お電話させていただいた際も2コール以上待つことはありません。取材記事にてご紹介させていただいた常に挑戦をし続ける同社の姿勢の他にも、伺って初めて感じる同社の素晴らしさが数多くあります。今後の益々の発展を確信させる素晴らしい企業様でした。

掲載企業からのコメント

  • 三正工業株式会社 からのコメント

    弊社の魅力を発信する機会をいただき、誠にありがとうございました。私がこの会社を引き継いでから、第二の創業期だと位置づけ、がむしゃらに駆け抜けてきました。その歴史を振り返る良い機会を与えていただいたと存じております。今後も挑戦をやめることなく駆け抜けていく所存です。

企業情報

  • 創業年(設立年)

    1958年

  • 事業内容

    油圧機器製造

  • 所在地

    東京都葛飾区白鳥4丁目2番15号

  • 資本金

    3,000万円

  • 従業員数

    約80名(正社員名)

  • 会社URL

    http://www.sansei-ind.co.jp/

沿革

  • 1958年~1999年

    1958年
    中央区八丁堀3-11に有限会社大伸製作所設立(工場:葛飾区白鳥4-10-3/資本金60万円)

    1966年
    有限会社三正工業に社名変更。資本金150万円に増資

    1969年
    三正工業株式会社に組織変更。本社及び本社工場を現在地に移転

    1970年
    資本金600万円に増資

    1971年
    資本金1000万円に増資

    1979年
    本社工場第1期増築工事完了

    1985年
    本社工場第2期増築工事完了

    1989年
    矢吹工場新設

    1999年
    資本金3000万円に増資

  • 2001年~2007年

    2001年
    創業者、初代代表取締役岸藤太郎死去に伴い現・代表取締役に岸秀世司が就任

    2004年
    ベトナム人研修生受入れ開始(第1次)

    2004年
    矢吹工場改築工事完了

    2006年
    東京都より「中小企業新事業活動促進法」の経営革新計画による認証を取得
    中小企業の新たなる事業活動の促進に関する法律第9条第1項の規定に基づく承認

    2007年
    福島県矢吹工場床面前面エポキシコーティング実施

    2007年
    東京本社改築工事1F・3F

    2007年
    福島県矢吹工場増築工事予定(工場増床工事)

    2007年
    新規加工設備導入予定

    2007年
    設立50周年を迎える

    2007年
    周年行事の一環として制服の全面リニューアル

    2007年
    三正工業(株)創業50周年記念ベトナム研修旅行

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