日本が誇る伝統と挑戦の革新企業

取材趣旨:企業インタビュー

1951年に測定器類の修理を請け負う会社として創業した佐藤電機製作所。その後、板金加工へ挑戦し、大手通信機器メーカーとの取引で業績を着実に伸ばしていく。しかし、リーマンショックで大打撃を受ける。そこで、新規顧客の獲得と社内コミュニケーションを主軸とした組織改革を行った。創業73年を迎えた現在、医療機器、半導体関連装置、通信機器などの精密板金加工を行っている。また、電池の代理店として老人ホームなどの施設へ非常用電源などを販売する商社機能も備える。社内においてはDXを進め、図面の電子化やシステム化による工程の一括管理などに成功した。今回は、佐藤社長に挑戦と変革ができる土壌ができた要因や、これからの展望を伺った。

  • 株式会社佐藤電機製作所

    代表取締役社長佐藤 薫宏

    私たち佐藤電機製作所は、創業70周年を迎えました。1951年に東京三鷹市で測定器の修理を請け負う小さな町工場として創業した当社は、その後、精密板金加工業に事業を転換し、創業者の出身地である山梨にて、事業を拡大してまいりました。
    昨今では医療機、航空機分野にも進出、さらなる成長に向け、2020年4月に代表取締役社長に就任いたしました。「ものづくりで未来を創る」をビジョンに掲げ、お客様、お取引先、地域社会、世界中の人々、従業員とその家族、そして自分自身が幸せになることを願って、ものづくりを行ってまいります。
    今後とも一層のお引き立てを賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

目次

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

社風

若手が生み出すエネルギーで活気の溢れる会社

佐藤社長に社風を伺うと、「活力やエネルギーに溢れている」と教えてくれた。ただ、この社風は変わってきたものだ。昔は、職人気質で、技術力で勝負していた。創業以来、大手通信機器会社から受注をもらい、製造が難しい機種でも技術力で信頼を勝ち取ってきた。しかし、2008年のリーマンショックを皮切りに、新たな顧客と出会い、少品種大量生産から多品種少量生産に変えるにあたり、社内の連携が重視されることとなる。そこで、コミュニケーションを主体として改革を行った結果、若いメンバーが増え、会社に活力、エネルギーが溢れてきた。佐藤社長は「ビジョンの構築」が社風が変わったタイミングだと語る。2020年の社長交代に伴い、ビジョンを自身の右腕、左腕となる新幹部を巻き込んで構築した。それにより目指すべき目標が明確になり、社員に主体性が生まれてきたのだ。一人ひとりが考え、自ら良くする、変えていくという風土によって、活気が溢れる社風となった。

独自性

「変われる人材」が時代を席捲する

同社の強みは、「変われる人材」が多いことだと佐藤社長は言う。では、「変われる人材」とはどういう人なのか。変化がより一層加速している現代社会において、板金業界は、設備・技術・生産管理体制があることは当たり前で、管理力や組織力が重要となっている。その肝を担うのが、幹部の存在だ。同社では、ビジョン構築を行った新幹部だけでなく、次世代を担う人材が台頭し、全社の意識を変えていった。「変わる」を象徴するのが、DXの浸透であろう。紙の図面をiPadを導入したことで電子化し、新たな工程管理システムも導入した。それには相当の苦労があったが、社員はそれを乗り越えることができた。だからこそ、「変わる」ということに対する抵抗感が低くなっていると佐藤社長は教えてくれた。今では、若手社員が独自のアプリケーションをつくり工程管理するなど、製造業では突出したDXを行っている。「変われる人材」と共に、多様な時代を駆け抜けていく。

展望

ものづくりで未来を創る

2020年、社長交代のタイミングで掲げたビジョン、「ものづくりで未来を創る」。お客様を大切にすることはもちろん、努力したことが昇給、昇格などを通じて、社員に返ってくる。そうすることで社員の家族も幸せになる。また、より良い会社になることで、地域社会にも貢献することができる。そして、事業としては、ミッションである「一枚の鋼板から何でもつくる会社」の実現に向けて、組配事業への進出を考えている。その実現のカギは、各階層の引き上げ。組配事業を受注するためには、社内での各階層が育ち、受け入れ体制を整えることが必須なのだ。佐藤社長は、トップダウン経営では組織の成長が難しくなっていると感じている。だからこそ、若手が自ら考え、行動できる、「自律自走」する組織を目指していく。「そういった環境をつくることが私の仕事」と語る佐藤社長。2025年には新工場の完成も予定しており、より一層、「ものづくりで未来を創る」会社へ邁進していく。

仕事と遊びの垣根がない職業だからこそ、常に学びの場を求め続ける

人材育成で心掛けていることを教えてください。

まずは、誰をどんな役職につけるかが重要ですね。役職が人を育てると私は考えています。役職を与えることで責任感が生まれ、自ら考えて行動するようになる。まさに「自律自走」の組織を目指すためには必要な考え方ですね。また、役職を与えられることでモチベーションが上がり、より活気が溢れた会社にもなっていくと思います。ただ、役職を与えるタイミング、順番、内容によっては、その人が悪い方向にいってしまう可能性もありますね。その人が役職の重圧に負けてしまうことや、周囲からの見え方にも影響することで、その人だけでなく、組織として機能不全を起こす可能性があるんです。そうならないために、会社全体のバランスを見て、効果が最大化するタイミングを計っています。

経営する上で大切にしていることは何ですか?

自分の持っている芯がブレないことですね。最近、どんなことを聞かれても迷わず判断できるようになってきました。それには、社長になるまでの経験が活かされているんです。私は、2003年に佐藤電機製作所に入社して以降、製造、営業、財務と様々なことを経験しました。その経験が、ものごとを多角的に捉え、判断をする引き出しとなったことで、瞬時な判断が可能となってきているんだと思います。新工場を建設する判断の際にも、もちろんリスクもありますが、未来を見据え、今の課題を考えると迷わずに「やる」という判断に至りましたね。今後も、自分の芯からブレることなく判断して、進化していきたいです。

佐藤社長自身は、どのような人になっていきたいですか?

人との繋がりを大切にしたいという想いがありますね。また、気付きや学びに終わりはなく、いろんなことを経験したいという想いもあるんですよ。だからこそ、若者から「接したい」と思われるような人であり続けたいですね。私は、会合やゴルフなど、誘われれば断らないようにしています。また、社員旅行でも若手のメンバーと一緒に朝まで飲むこともあります。そこで若手の考え方、仕事への向き合い方を知り、会社経営に活かしていくんです。社長というのは、仕事と遊びの垣根がない職業だと思っています。60歳まで、若者と朝まで飲んでいたいなと思いますね。そのためには、健康や体力が一番です。

  • 「ものづくりで未来を創る」佐藤電機製作所山梨工場

  • 中小企業の魅力を伝えるため、300名の大学生の前で講演を行った佐藤社長

  • 社員旅行にて、佐藤社長の周りに集まる若手たち

「自分で道を切り拓く」ことが会社の方向性を決める

株式会社佐藤電機製作所 製造部リーダー 柏木 光

柏木リーダーは、2021年に新卒で佐藤電機製作所に入社。金属板を曲げる工程で経験を積み、2023年に同社では社内最速でリーダーに昇格した。曲げ工程としての業務を行いながらも、リーダーとして工程管理、仕事の割り振り、トラブル対応、新人教育などを行っている。また、自身の経験を活かし、アプリ開発にも尽力しており、現在、製造予定がiPadでわかるアプリを、自工程はもちろんのこと、他工程まで広めている。このように、より効率的に作業を進められる環境づくりを行い、同社の生産性向上に寄与。入社3年目にして、最も勢いのある若手の一人として名を連ねている。今回は、そんな柏木リーダーに、考え方の原点やこれからの展望を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

入社理由

自分の意志で道を切り拓くことができる場所

「自分の意志で道を切り拓いていく」こと。それが、柏木リーダーが同社に入社を決めた理由である。柏木リーダーの同社への入社が決まったのは、入社式の実に2週間前のことであった。それまで、県内で大手土木系の会社から内定はもらっていたものの、挑戦できるか環境があるか不安が残り、内定を破棄した。もし入社していれば、情報系の学校で培った知識を武器に、新しい部署をつくりたいと考えていたようだ。そんな中で、佐藤電機製作所の会社見学に参加したい際、「実力があれば上がっていける」と言ってもらえたことが決め手になったという。入社後、曲げ工程にて尊敬できる上司と出会い、どんどん仕事を任せてもらえるようになる。自分が携わるものは自分主体で動かないと気が済まない。そんな想いで、どんどん自らの影響力の輪を広げていった。そして2023年、同社では社内最速でリーダーへ昇格した。自分の意志で道を切り拓いたのである。しかし、これは柏木リーダーを語る序章に過ぎない。

やりがい

自分の判断が会社の方向性を決める

自分の判断、意志で会社の方向性を決められることが柏木リーダーのやりがいであるという。特に、特急対応が求められる製品を受注した場合、元々の予定を変更する必要がある。その際に、他工程のリーダーや上司と相談し、調整でき、顧客満足に繋げられた時にやりがいを感じると語る。調整できたことだけでなく、それが顧客満足に繋がるというところまで考えられていることが柏木リーダーの視座の高さを象徴している。なぜ、それができるのか伺ったところ、「自分の中で、製造の初めから出荷までの仕組み、優先順位を把握できているから」と教えてくれた。しかし、優先順位を把握するためには、失敗もあったという。リーダーになるまでに、優先順位を意識し、行動してきたからこそ、それが経験として蓄積されているのだろう。自工程だけでなく、会社単位で物事を捉え、最大成果を出すためにどうすることが最適かを考えている柏木リーダーは、今後さらに成長していくに違いない。

自らの影響力を広めていく

今でさえ、会社単位で物事を捉えられている柏木リーダーの夢は、「自分の意志で決められる規模、範囲を広げていくこと」だという。そのためには、自らが信じてもらえる人になることが必要だと教えてくれた。みんなから「柏木さんが言うなら間違いない」と思われる存在になり、佐藤電機製作所の顔でありたい。そのために、今意識していることを聞いたところ、自らが一番できるリーダーになり、リーダーの立ち位置を上げていきたいとのこと。会社の成長を考える中で、リーダーのレベルアップは不可欠である。また、自身が携わっているアプリ開発でも、製造業でITに特化した会社の先駆けになれるように、現場と両立してやっていきたいという想いもあるという。責任感、使命感を持って仕事に携わっている柏木リーダーなら、我々の想像を軽く超える結果を出すのは難しいことではないのかもしれない。

  • 社員旅行で楽しむ 佐藤社長・柏木リーダーたち

  • 全社員の前で、 自工程の改善内容を発表する 柏木リーダー

  • 柏木リーダーが幹事を務め、 好評だったスノボ合宿

常に新しいことへ挑戦したい

佐藤電機製作所をどんな会社にしていきたいですか?

「佐藤電機さんって新しいことに挑戦しているよね」って言われるようになりたいです。例えば、今、DXなどの面で、他社と比べると進んでいると言われますが、それが一過性のものにならないようにしたいですね。そのためには、システム部門や新しい部門をつくることが必要だと思います。今、せっかくアプリをやっているので、板金業界をわかっている我々が、板金に特化したアプリをつくり、それを他社に展開して運用までサポートできる事業はできるんじゃないかなと思っています。デジタルに限った話ではないですが、どんどん会社全体として進化して、常に「佐藤電機さんって新しいことに挑戦しているよね」って言われる会社でありたいですね。

柏木さんにとって佐藤電機製作所はどんな会社ですか?

私のことをすごく育ててくれている会社だと思います。柏木光という人間の価値を高めてくれていると言いますか。入社してすぐに言われた「若い子でも実力があればどんどん成長できる」という言葉の通り、様々なことに挑戦させてくれます。私の例で言うと、リーダーをやらせてもらったり、DXの浸透のために、現場社員には通常支給されていないパソコンを購入していただいたり、有料版が必要なアプリについて迅速に対応してくださったりですね。私自身がやりたいと言ったことに対して、ほんとにバックアップしてくださる環境はあると思います。育てていただいているからこそ、それに応えて、もっと成長していきたいですね。

佐藤社長はどんな人ですか?

会社に必要だと思うことには妥協しない人です。だからこそ、ストイックでチャレンジャーで、行動力があるんだと思います。最近特に感じたのは、話のスピード感ですね。DXに向けたアプリで、使っていなければわからない内容でも、即座に回答してくださって、そんなところまで調べているんだと思いました。元々こうなることを視野に入れていたのかなと感じました。どんどん話が進みますし、やりたいことがすぐ実現できるんですね。また、私は、社員旅行の飲み会でも必ず佐藤社長に近くにいるのですが、本当に社員を大事にしているというか、好きなのかなと感じますね。そんな佐藤社長からもっと学びたいと思います。

担当者からのコメント

  • 監修企業 担当者

    この度は、取材にご協力いただきありがとうございました。「ものづくりで未来を創る」というビジョンを社員が体現し、トップダウンではなく、ボトムアップの体制を構築できていると感じました。特に、DXの面においては、製造業では類を見ないと感じました。ただ、そこに胡坐をかかず、常に進化を求めている同社は、これからも成長し続けると確信しております。

掲載企業からのコメント

  • 株式会社佐藤電機製作所 からのコメント

    この度は取材していただきありがとうございました。弊社は、若手の台頭によりここ数年、変化してきていると感じます。柏木の今後の展望も聞くことができ、これから弊社を担っていく人材が増えてほしいとワクワクしております。今後も「ものづくりで未来を創る」というビジョンに向かって、より組織を強化し、刻々と変化する時代に対応していきたいと考えております。

企業情報

  • 創業年(設立年)

    1951年

  • 事業内容

    精密板金加工業 電池販売事業
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    ■採用情報
    採用情報

  • 所在地

    東京都三鷹市中原3-1-53

  • 資本金

    2,000万円

  • 従業員数

    67名

  • 会社URL

    https://s-d-s.co.jp/

沿革

  • 1951年~1989年

    1951年7月
    初代社長佐藤義忠が測定器類の製作、組立配線を個人事業として開始

    1959年7月
    東京都三鷹市で本社工場(現本社)竣工

    1961年8月
    法人組織として有限会社へ移行

    1980年1月
    山梨県石和町で石和工場操業開始

    1987年4月
    佐藤喜行社長就任 株式会社に組織変更

    1989年4月
    山梨工場竣工、石和工場から移管

  • 2011年~2020年

    2011年1月
    東京都BCP策定支援事業により、BCP(事業継続計画)策定完了

    2014年10月
    東京都「成長産業等設備投資特別支援事業」に採択

    2014年11月
    山梨県「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」に採択

    2015年5月
    「独立型再生可能エネルギー発電システム等対策費補助金」に採択

    2016年1月
    東京都「第2回成長産業等設備投資特別支援助成事業」に採択

    2016年2月
    山梨市と災害時の電力供給に関する協定を締結

    2020年4月
    佐藤薫宏社長就任、ロゴマーク刷新、本社新社屋竣工

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