取材趣旨:企業インタビュー
生花を加工し、数年間瑞々しい姿を楽しめる「プリザーブドフラワー」。創業1981年以来続くスクールの運営と2008年から開設したプリザーブドフラワー専門店を運営しており、業界の先駆者として成長を続けるのがベル・フルールである。創業者である現会長がフラワーデザインスクールからスタートした同社は、創業から現在までの間に銀座校・常盤台校と2校のスクール運営、直営店として銀座店・虎ノ門店の2店舗を運営。全国の百貨店内に8店舗を構え、フラワーデザインカンパニーとして確固たる地位を築いた。今回の取材対象は、自らデザイナーとして日本フラワーデザイン大賞で1位を獲得する実績を持ちながらも、経営者として店舗出店や事業拡大を担ってきた今野社長である。デザイナーとして、経営者としての価値観、そして展望に迫る。
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株式会社ベル・フルール
代表取締役社長今野 亮平
人生の中で最も幸せを感じる瞬間。
人と人とのコミュニケーションの中で生まれる喜び。
相手を想う心が通じた時、私たちは真の満足感に包まれることでしょう。
ベル・フルールは花の世界を総合的にプロデュースするフラワーデザインカンパニーです。
人生の様々なシーンに、美しい花と共に温かい心をお届けします。
1981年創業、現在花の世界で活躍する多くのデザイナーを輩出する「ベル・フルール フラワーデザインスクール」。
学ぶ為の全ての環境が整った当校は、国家検定をはじめ、フラワーデザイナー検定試験で毎年全国トップの合格率を更新しています。今後は次代を担う子供達のための「花育」から「企業セミナー」まで、フラワーデザインのテクニックをより多くの方へ、幅広くお伝えして参ります。
2002年、生花を加工し、数年間瑞々しい姿を楽しめる「プリザーブドフラワー」が日本に本格的に輸入され、花の世界に大きな革命を起こしました。同年、日本初となるプリザーブドフラワーデザイン書を執筆。以来、多くのデモンストレーションを日本全国やアジア諸国で実施し、プリザーブドフラワーデザイン界の先駆者として今も業界を牽引しています。卓越したデザイナーの手仕事から生まれる商品はこのような背景から育まれ、自社アトリエで最高の品質を保ち、進化し続けています。
2008年には日本初のプリザーブドフラワー専門店を東京・銀座に開設。日本を代表する大手百貨店に出店し、多くのお客様の支持を頂いております。
これからも教育、商品、装飾、ショー、デザインと花の全てにお応えできる基礎力を軸に、広く社会に貢献し、フラワーデザインを通して「嬉しい」の花を沢山咲かせたいと思います。
美しい四季のある日本で誕生したブランド「ベル・フルール」。
グローバル化が叫ばれる今、日本人の繊細な美意識を大切に、世界にも日本の花文化を発信して参ります。
目次
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
全員デザイナー
今野社長は同社の社風を「自分でデザインすること」と語る。前述の通り同社はフラワーデザインカンパニーとしての地位を持つがゆえ、花を愛しデザインを愛するスタッフが多く集まるのは必然的なことだろう。今回特に目を向けたいのはそこではない。「全員が」デザイナーであるということだ。一般的に総務や経理などの事務職はデザイナーとは全く異なる仕事であるが、同社ではデザイナーとしての仕事が求められる。想像力を働かせ自分で仕事を描いて進めることをデザイナーの仕事としている。実際にオフィスを訪ねてみると各会議室に名前が付けられている。『Positive Power』『Creative Design』『Good Relation』と3つの部屋が分かれており用途に分けてデザインも造りも異なり、まさに想像力が働く環境が仕掛けられている。
AIやIoTに人間の仕事が取って代わられるこの時代。想像力を働かせるデザイナーとしての仕事を「全員が」できる文化、できる環境があることが同社が成長してきた一つの要因であろう。
他人がやらないことを他人がやらないレベルで
「他人がやらないことをやることです」と独自性を語る今野社長。これはデザイナーとしての右脳を使った感性でもあり、経営者としての左脳を使った戦略でもあると言う。例えば、2008年から始まった百貨店への出店。ECサイトビジネスの台頭により百貨店への出店をしかねる企業が多い中、同社では百貨店への出店を成功させ続けている。百貨店に足を運ぶ客層にターゲティングした高付加価値路線をとり、定型商品を提供するのではなくお客様一人ひとりへオーダーメイドの商品を提案することで多くのファンの心を掴んでいる。「ある日、お客様から言われた『百貨店でこういうものが欲しかったのよ』という言葉が忘れられません」と今野社長が語るように同社の独自性はお客様にも認められる確固たるものになっている。決して自分の好みではなく、社会やお客様にとって必要なことを右脳・左脳を巡らせて考え抜き他人がやらないレベルでやることが、同社がたった一つのフラワーデザインカンパニーとしてあり続ける源泉となっているのだ。
世界に通用する”お花のルイヴィトン、エルメス”
展望を尋ねると「生きているうちにお花のルイヴィトン、エルメスになることが夢ですね」と屈託ない笑顔で話す今野社長。独自性を活かした高付加価値路線で世界に名だたるハイブランドとしての地位を築くことが同社の展望である。実を言うと日本は世界一のプリザーブドフラワー大国である。創業者である今野会長が世界大会で3位入賞するなど既にその名を世界に轟かせている一面もあるが、同社の世界へのチャレンジは今も続いている。実際に、同社の従業員の中には、韓国人4名、中国人1名、ミャンマー人1名とグローバルな人材活用を進めている。なんと仕入れ担当は韓国人が担っているそうだ。また、今野社長自身も同社を世界ブランドとするべく、今年インドで開催される世界大会への出場に向けて準備を進めている。
ブランド、人材、実績、名実ともに世界へ羽ばたくフラワーデザインカンパニーが誕生するのもそう遠い未来ではないであろう。
代表インタビュー
社内のデザイナーを育てるための工夫を教えてください
毎朝、みんなでGOOD&NEWをしています。日々の生活の中で良かったことや新しく気付いたことをシェアする取り組みです。デザイナーはアウトプットが良くなければいけません。そのためには日々のインプットが必要です。スタッフには「意図的に遊びなさい」とよく言っています。会社への通勤もただ時間を過ごすのではなく、感じる嬉しさや気付きを大切にしたり、気になることがあれば足を運んでみるなど、意図的に良いことや気付きを探すことで結果クリエイティブになると考えています。
また店舗での販売においても「ファンをつくりなさい」とスタッフに教えています。店舗にあるものを売るのではなく、オーダーメイドの商品、つまりないものを売るからこそ日々のインプットによってお客様の要望を感じ取れるようになることが必要なのです。
フラワーデザインをする上で重要なことを教えてください
クリエイティブとデザインは異なるものであると考えています。デザインには制限があります。お客様のニーズやご要望といった制限がある中で、いかに自分の個性を出してお客様に喜んでいただくかが重要です。だからこそ我々はフラワー”デザイナー”という肩書きにこだわっています。自分の感性を信じてクリエイティブにつくったものが偶然にお客様に喜ばれるのではなく、お客様に寄り添ったデザインだからこそ必然的に喜んでいただけるものが生まれるのだと考えています。例えば、国によっても好まれるデザインが異なります。日本では”余白の美”を重んじますが、欧米では華やかに飾ることが重要視されることもあります。それぞれの国の文化や価値観に寄り添った上でデザインをしていくことが必要となります。
組織づくりの工夫を教えてください
経営においては逆ピラミッド型の組織です。経営者は社員を支える役割です。定期的にコミュニケーションをとったりもしますし、社内のスタッフからは、社長ではなく”亮平さん”と呼ばれることが多いです。一方デザイナーとしては、ピラミッド型の組織です。生産することに集中するあまり、デザイン
がないがしろになってはいけないので、定期的に品質会を行ったり販売ミーティングを行うなど、デザイナーとしてのブランドが向上し続ける取り組みを行っています。
また、今年は教育元年と言っています。弊社はお花を教えるスクールではありますが、社員が増える中で形はこだわっていませんが、リーダー候補となる人材がこれから更に必要になってくると考えています。
サッカーチームのロゴデザインも 手掛けている
運営するフラワーデザイン スクール
直営1号店 銀座本店
求められることをカタチにしていく

株式会社ベル・フルール プロダクトリーダー 藤原香菜子
今回、インタビューしたのは入社10年目でプロダクト部門に所属する藤原さん。同社には、物流や販売、スクール運営、本社部門など様々な部門があるが、その中でプリザーブドフラワーをハンドメイドで制作しているプロダクト部門でリーダーを担っている。店頭に出す販売商品や、個人のお客様や企業からオーダーを受けた制作物や展示会等のイベント時で使用するディスプレイなどプリザーブドフラワーを使用して様々なものを制作している。また、リーダーとして社員・パートの技術教育や管理など仕事の幅は多岐に渡る。同社の生命線であるプロダクト部門のトップである藤原さんに仕事のやりがいや夢などご自身の考えを伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
社長の熱意に感銘を受けて
「学生時代に社長に出会えたことがきっかけです」と藤原さんは自身の入社理由を語る。今野社長と出会ったのは、藤原さんが専門学校に在籍している時のことである。フラワーデザインコースでフラワーデザインと園芸の基礎を学んでいた。当時は卒業後は花屋さんに就職しようとぼんやり考えていた。しかし、職業体験をするうちにその道に迷いが生じたと言う。どの道に進むべきか迷っている中、学校に特別講師と来た今野社長に出会った。プリザーブドフラワーを初めて知ったわけではなかったが今野社長のプリザーブドフラワーの説明やディスプレイ制作を教えている姿を見て「熱意とアクティブさに感銘を受けました」と藤原さん。そのまま、職業体験を行うことに。細かい手作業を行いたいと感じていた藤原さんにハンドメイドで制作してかつ難易度が高いプリザーブドフラワーは、自身が行いたいこととマッチしていた。悩んでいる時に今野社長から「来ちゃいなよ」と言われ、入社を決意。今では高い技術力で会社のコアを担っている。
求められることをかたちにしていく
仕事のやりがいについて「お客様が望んでいるものをカタチにできること」と藤原さん。同社は直営店やオンラインショップで販売する製品に加えて、お客様からの要望に応えるオーダーメイドを行っている。求められるものを汲み取りカタチにし上手くいった時に藤原さんはやりがいに感じている。また「店舗があるので直接お客様の声が聞ける」ことも藤原さんのやりがいの一つ。販売部門が自社にあるので、お客様の生の声を聞くことができる。藤原さんが特に印象に残っていることは「お客様がオーダーした花でプロポーズに成功したこと」と語る。そのお客様は彼女の誕生日に毎回お花をオーダーしていたお客様でついにプロポーズでもオーダーした花を使用。見事、成功してお客様が直接店舗に来て感謝されたとのこと。その後結婚式でもオーダーしていただいている。お客様の声を汲み取り、カタチにしているからこそお客様から評価され人生を変えるシーンまでも作ることできる。藤原さんはこのやりがいを感じながら、お客様の”こうしたい”を叶え続けている。
技術や感性を伝えていく
藤原さんは将来の夢を「ずっと、お花に関わっていきたい」と語る。花を通じて、様々な要望を叶えお客様の笑顔をつくっている。そんな藤原さんは自身の技術力を向上していくのみならず「同じ技術や感性を持てる人をたくさん育てていきたい」と考えている。プロダクト部門のリーダーとして、日々技術的な教育を行っているが、新卒で入社し10年たった藤原さんの技術はベテランの域。同じ技術や感性を後輩に伝え、一人でも多くの方に喜んでもらうことを藤原さんは考えている。現在は10数名の社員を教えており、中には外国人の社員もいる。「色々な言語が飛び交う会社になったら面白い」と藤原さん。海外から就業に来た人がベル・フルールだから来たと言ってもらうためにも、自身の花に対する感性や技術を継承していき、世界に発信していく。それが花に関わり続け、ベル・フルールの更なるグローバル化につながっていくはずだ。
2019年10月に新社屋に移転
植物や苔を用いたプリザーブド フラワー
生花よりも長く瑞々しさを保てます
どの人よりも明るく仕事をする
今野会長はどのような方ですか
とにかく熱い人です。どんなことにも全力ですね。私たちはそのエネルギーに付いていくだけです。そのくらいエネルギーに満ち溢れています。仕事はもちろんのこと、プライベートにも全力で、以前2号店がオープンした時は、オープン直前にサッカーで骨折してしまい、そのままオープンを迎えたこともあります。その時も利き手を骨折して絶対痛いはずなのに病も気からと利き手を使い業務を行っていましたね。自分が行う全てのことを妥協せずに行う方です。引き寄せる力もあると感じます。トークが自然と惹きこまれます。私も面接をして気付いたら入社していました。周りを惹きつける魅力がありますね。また、社員のことをファミリーと呼んでいて、細かいことも常に気を遣ってくださり、会社の雰囲気を明るくしていただいています。
仕事をする上で大切にしていることを教えてください
やはりリーダーという立場なので、自分のことだけではなく、周りを全体的に見るようにしています。各個人のオーダーでどんなオーダーがあるのか、いつまでの納期であるのか、タイムスケジュールを把握しながら管理しています。後は、常に明るくいることを心掛けています。オーダーメイドは時には納期に追われることもあるので、張り詰めた空気にならないようにどんな時でもどの人よりも明るくいれるようにして雰囲気づくりを大切にしています。また、製品のクオリティは細部まで突き詰めています。よく社員に言うことはお客様がその製品の箱を開けた時にどう思うか。少しでも見栄えが悪かったら駄目なので、納品前にチェックは重要ですね。
ベル・フルールの良いところを教えてください
店舗としては、オートクチュールができることですね。ノーとは言わず、可能な限りお客様の希望を100%叶えていくことです。プリザーブドフラワーは既成品のみの販売が多いのですが、どんな要望でもやれるだけやろうというところは少ないと思います。時にはお客様のご自宅まで運ぶことやディスプレイを行ったりと様々なことができます。会社としては、社員の仲が良く、色々な仕事ができることです。社内のコミュニケーションが活発なので、販売部門からきたお客様の声もタイムリーに知ることができます。仕事もただ制作だけをするのではなく、企業に実際に行ったり、お客様のご自宅で制作をしたり仕事の幅が広いです。以前、お寺の装飾を行うために大工さんと協力したこともありました。単純作業がなく常に考えながら仕事ができる会社です。
担当者からのコメント
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監修企業 担当者
今回の取材で、「全員がデザイナー」と今野社長がおっしゃていたことが印象に残りました。
ただ、自身の感性だけでつくり、偶然でお客様に喜ばれるのではなく、お客様に寄り添ったデザインで
必然的に喜ばれるものをつくっているのからこそ、ベル・フルール様が様々なお客様から喜ばれているのだと実感しました。今後は国内のみならず、世界でベル・フルール様がつくるデザインが見ることができるので、とても楽しみです!
掲載企業からのコメント
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株式会社ベル・フルール からのコメント
今回のこのような機会をいただき、ありがとうございました。普段、取材を受けることは多くありますが、ここまで、深く話したいと思ったのはあまりありませんでした。取材の中で会社への思いや、自身の考えを改めて振り返ることができる貴重な時間となりました。ありがとうございました。
企業情報
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創業年(設立年)
1981年
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事業内容
フラワーギフト販売 通信販売事業フラワースクール運営 ブライダル事業 店舗、イベントディスプレイ、インテリアコーディネート 法人向けリース事業(プリザーブドフラワー、アーティフィシャルフラワー) デモンストレーション、講演 トークショー、講習会の企画運営 TV出演、演出/監修、雑誌、書籍関連事業
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所在地
東京都板橋区東新町2-8-6
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資本金
1000万円
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従業員数
パート含み70名(社員25名)
- 会社URL
沿革
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1981年~2010年
1981年
フラワーデザインスクール「Belles Fleurs de Konno」創業
1964年〜2001年
東京情報ビジネス専門学校講師として2,000名を越えるフラワーデザイナーを輩出【今野会長】
2002年
WAFA世界大会(グラスゴー)3位受賞
日本初、プリザーブドフラワーのバイブルとも言われるロングセラー『プリザーブドフラワー ブーケ&アレンジメント(六耀社)』出版【今野会長】
2003年
有限会社ベル・フルール設立、のちに株式会社ベル・フルールへ
2004年
『プリザーブドフラワー・デザインブック(六耀社)』出版【今野会長】
2006年
日本経団連主催セミナーを実施
デザイン教育分野でコロンビア大使館より表彰【今野会長】
「日本フラワーデザイン大賞」1位受賞【今野社長】
2007年
初の常設店「伊勢丹 新宿店」出店
2008年
直営1号店「銀座本店」出店
「松屋 銀座店」出店
デザイン教育分野でコロンビア大使館より表彰【今野社長】
2010年
「三越 日本橋店」出店 -
2012年~2020年
2012年
韓国LG大学と契約、世界展開スタート【今野社長】
2013年
「東京都優秀技能者知事賞(東京マイスター)」受賞【今野会長】
「三越 銀座店」出店
2014年
東京堂アーティフィシャルブランド「MAGIQ」初代アンバサダーに就任【今野会長】
2015年
『美しき日本の花のおもてなし(六耀社)』出版、 中国にて翻訳出版【今野会長】
直営2号店「虎ノ門店」出店
第1回国際女性企業家フォーラムにて講演【今野会長】
2016年
フラワーデザインでの独立支援や、シニア世代からの活躍を推進する「講師会」を設立
2017年
「大丸 神戸店」出店
「三越 名古屋栄店」出店
『ワクワクお花屋さん気分 はじめての花レッスン(六曜社)』出版【今野会長】
2018年
「松坂屋 名古屋店」出店
「第15回国際フラワー&プランツEXPO」にてデモンストレーション
2019年
「高島屋 横浜店」出店
「西武 池袋店」出店
2020年
東京都板橋区東新町へ新社屋を移転
取材趣旨:企業インタビュー