取材趣旨:企業インタビュー
プラスチック加工はお任せあれ。同社は日本でも数少ない「プラスチックの総合加工メーカー」として、「曲げる・切る・貼る」の技術を駆使し、水槽のアクリル板、航空機や新幹線の内装、店舗の看板やオブジェ・フロアディスプレイ、建物の建材などなど、幅広い業界・案件を扱っている。そんな同社を牽引するのは、4代目代表取締役社長である加納社長だ。2011年に現在の役職へ就任した加納社長は、現在の事業に磨きをかけていくことと同時に、社内システムの改革や新規事業、そして次世代リーダーの育成など、次の時代を切り拓いていくための様々なミッションを背負っている。そんな加納社長から、同社の魅力とこれからの未来についてお話を伺った。
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株式会社シンシ
代表取締役社長加納識顕
弊社は創業者である田中信二が戦時中に戦闘機の風防ガラス開発に関わったことを機にアクリル樹脂に出会い昭和27年11月にアクリル樹脂を中心とした樹脂成形加工業の会社を興したのが始まりです。お陰様で令和4年11月に70周年を迎えることができました。近年、VUCAと呼ばれる言葉を耳にすることが多くなったと思います。
『Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)』VUCAの時代「予想が困難で不確実性が高く、先が見通しづらい時代」が訪れております。私たちは長年にわたり培ってきた経験とノウハウに増長することなく、このような変化に迅速に対応すべく飽くなき探求心のもと、常に新技術・開発に努めお客様の要望に応え魅了的な製品・サービスを提供し地域社会においても貢献できる企業を目指してまいります。
目次
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
一人ひとりの自主性と意見を大切にする会社
一人ひとりの自主性を重んじ、個人からの意見を大切にする文化・風土がシンシの特徴だ。規則やルールなど、社員を締め付けても真の生産性は実現されない。社会人としての基本や法律に反することを除いては、「自由にやってくれ」というのが加納社長の言葉だ。また、上司が絶対という考え方もなく、思ったことを素直に話せる関係性を上司と部下が築いている。加納社長が入社する前からこの社風はあったと言うのだから、これはまさに代々脈々と引き継がれてきたシンシの伝統と言えるだろう。さらに、個人からの意見を生かした会社経営をするために、年に2回の人事考課面談は社長が必ず実施したり、一緒にお酒を飲みに行って社員の心の声を聞いたりと、加納社長も様々な形で社員とコミュニケーションを図る工夫をしている。 自ら考えて動きたい、自分の意見が言いやすい社風の会社で働きたいと考えている人にとっては、イキイキと働くことのできる会社であると言えるだろう。
プラスチックの総合加工メーカー
「プラスチックの総合加工メーカー」であること。これこそが、同社の最大の強みであり、独自性だ。プラスチック加工はその技術の特殊性故に、「自動車関係の加工だけしかしない」など、ごく一部の技術や業界に特化する企業が多い。しかし、今やプラスチックは世の中のあらゆる場所で使われる素材であり、一部に特化していては、世の中の幅広いニーズを受けることができなくなる。そんな中で、プラスチック加工における「曲げる・切る・貼る」のすべての技術に高いレベル対応することができる同社は、顧客の「こういうことがしたい」というニーズに対して、あらゆるノウハウを駆使し、応えることができる数少ないプラスチック加工メーカーだ。その結果として、水族館の水槽のアクリル板をはじめ、航空機や新幹線の内装、ガソリンスタンド店の看板、建物の建材や店舗ディスプレイなど、実に幅広い業界に対応することができており、一部の顧客に依存しない安定した顧客基盤を築くことができているのである。
さらなる成長発展へ 鍵は次世代のリーダー
グローバル化により競争が激化する製造業。過去の技術や実績にしがみついていては、生き残ることはできない。加納社長は、新しい事業の立上げや社内体制の革新、人材の育成など、同社のさらなる成長発展へ向けた改革を徐々に進めているが、新たな事業や社内体制など、企業のハード面をいくら整えても、それを上手く扱える人材がいなければ、企業の盤石な発展はないため、その肝となるのが人材育成である。中でも加納社長が、特に注目するのが、次世代リーダーの育成だ。同社を今まで牽引してきた管理層が60代近くになり高齢化が進む中で、いかにそのバトンを受け継ぎ、新たなシンシをつくっていく人材を育てるのかが急務となっているのだ。加納社長は、30年ぶりの生産管理システムの刷新においてプロジェクトチームを結成し、社員が会社づくりに積極的に関わる機会をつくるなど、次世代リーダーの育成へ自ら乗り出す心構えだ。次のシンシを牽引するリーダーが台頭した時、さらに輝かしい未来が切り開かれるに違いない。
加納社長に聞く、社長就任の経緯とこれからのこと
社内体制や新たな事業への取組みについて教えてください
今年、30年ぶりに生産管理システムを一新しました。東京と栃木でプロジェクトチームを結成し取り組んだ大規模な改革活動でしたが、これにより、営業と工場現場でより情報の共有が円滑になり、管理者側としても正確な現状把握ができるようになり、さならる生産性や利益率の向上が見込まれると思います。また、今後は、今のプラスチック加工事業に磨きをかけていく一方で、より成長発展していくために新たな事業をつくっていくことも計画しています。今の事業と全くかけ離れたものを扱うのではなく、今の事業基盤となっている"樹脂"に関連したサービスを行うことで、シナジー効果を生むこともできると考えています。
人材育成において、まず取り組んでいきたいことを教えてください
まずは、もっともっと全員の意識レベルを上げていきたいなと考えております。例えば、お客様からクレームやご指摘を頂いた際の一人ひとりの対応をもっと迅速・的確にできれば、さらなるお客様の満足度向上につながると思いますし、コストやマネジメントへの意識が強化されれば、より生産性の高い仕事が社全体としてできるようになります。この意識の底上げができなければ、どんな活動をしたとしても、なかなか会社が前へ変わることは難しいですね。そして、社へそうした意識の浸透をするためには、やはり管理クラスの社員が率先して実行し、社全体へ働き掛けていくことが重要だと思いますので、次世代のリーダーの方々の成長にかかっていると考えています。
トップとして、どのようなことを大切にしていきたいですか
やっぱり社員の皆さんには、この会社で働いていることや自分の仕事に対して誇りや希望を持っていただきたいと願っています。そのような社員満足が良い仕事を生み、お客様満足につながり、最終的には会社の利益になっていくんだと思います。そうなれるように、私も尽力していきたいと考えています。2011年に就任してから今までで、社員とのコミュニケーションを大切にしながら社内の現状把握を進めてきたので、今後はもっともっとトップとして、例えば会社の目指すべきビジョンを発信していくなど、社員の皆さんがより誇りや希望を持って働ける環境づくりをしていきたいと考えています。
60年以上築き上げてきた伝統
有名水族館の水槽アクリル板
同社を支える高い技術力
お客様・世の中のモノづくりを 確かに支える仕事

株式会社シンシ 営業部 長濱洋輔
100%受託加工の仕事。それは、自社商品を売るということではなく、お客様の「こうしたい」を受け止め、それを形にする仕事であるということだ。他社ではなかなか実現することが難しい案件を抱え、同社を頼りに訪ねてくるお客様に対して、いかに提案をできるのか、「プラスチックの総合加工メーカー」として幅広い技術・業界に対応することができる同社の営業の腕の見せ所だ。現在その営業部に所属する長濱さんは今年入社したばかりの、新進気鋭の人材だ。「これからもっと大きな会社にしていくために」「もっと営業力を強化していくために」という視点から、これからの同社について、そして自身について語る長濱さん。そんな熱き思いを胸に秘めた長濱さんから同社の魅力と今後について伺った。
伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い
モノづくりの楽しさを感じたい/入社後に感じた「和」の魅力
前職は、樹脂を扱う加工商社で働いていた長濱さん。商品を企業から企業へ受け渡す仕事をする中で、より商品の製造に近い立ち位置で、モノづくりの喜びを感じたいという欲求が高まっていた。そんな折、縁があって、プラスチック板加工メーカーであるシンシに長濱さんは入社した。入社後は、長濱さんのもとへ訪れた多くのお客様と一緒に、どのようにお客様がつくりたい製品を実現していくかという観点から打合せを重ねる仕事に打ち込むことができていると言う長濱さん。同社の取り扱う商品が幅広いこともあって、様々なモノづくりに関わる楽しさをまさに噛みしめている。また、厳格な上下関係に凝り固まっておらず、部長でも「~さん」と呼び合ったり、上司が絶対ではなく自分の意見を言いやすい、風通しが良い社風も入社を後押しした。会社の理念である「和・誠実・努力」の「和」をまさに体現したかのような過ごしやすい社風・環境で、伸び伸びとモノづくりの喜びを感じることができる会社なのであ る。
お客様・世の中のモノづくりを確かに支える仕事
同社では、プラスチック加工の「曲げる・切る・貼る」という技術を網羅的に取得しており、幅広い業界・商品をに対応できる数少ない企業だ。だから、他社では対応することが難しい案件でも相談に乗ることができ、顧客から頼られる存在である。長濱さんの営業としての仕事は、「こういうことがしたいんだけど、何とかならないかな」とお客様が困り顔で持ってきた案件について、お客様と密な打合せを重ね、同社が持つあらゆるノウハウを駆使して実現まで導くこと。それができた時にお客様から言われる「ありがとう」の声は、それまでの努力が報われるほどに嬉しい。また、同社が加工する製品は、航空機や新幹線の内装、店舗の看板などなど、日常生活の至る所で使われている。「街へ出かけると、『あ、これは私が携わった製品だ』と一目見て分かります」と嬉しそうに語る長濱さん。自分が努力して実現させた製品が世の中で確かに使われていることを実感できるのは、とても大きなやりがいになるだろう。
もっと大きな会社に さらに成長するための営業力強化
「私はまだ若く、これから先、何十年もこの会社で働くということになります。であれば、もっと大きな会社にしていきたいですね」入社して間もない新進気鋭の長濱さんは、これからの夢をこう語る。そのためには、やはり営業として、会社の売上をどんどん増やしていく必要があるため、既存の顧客を大切に守っていくことは勿論のこと、新しい顧客を獲得していく新規開拓の動きがより重要になってくるのだ。そのためには、まずは自分自身が営業としてもっと成長していかなければならない。CADやイラストレーターの図面を扱えるようになるなど、お客様の要望へより正確に答えられる幅を広げるために、専門的な知識やスキルを社内に先駆けて身に付けていきたいと長濱さんは意気込みを語る。また、1人で孤軍奮闘しても、新規顧客を増やしていくのは難しい。営業部内や他部署との連携をさらに向上させ、社として新規顧客開拓への体制を強化させていく必要があると長濱さんは考えている。
お客様の幅広いニーズに対応可能
あらゆる場面で活躍する製品
自分が携わった案件が一目瞭然
長濱さんに伺ったご自身のこと、会社のこと
樹脂を扱う業界へ飛び込んだ経緯を教えてください
最初は樹脂の材料を扱う会社に入社して、次に加工商社へ転職し、3社目として加工メーカーであるシンシへ入社したのですが、樹脂については社会人になる前は、全く知らなかったのです。でも、就職活動をしていて、樹脂を加工して出来上がった製品を見た時に、「こんなに綺麗なものがあるんだ」と感銘を受けまして、この業界に入りましたね。その当時の気持ちがまだ私の中に残っているということと、せっかくならこの業界で社会人として積んだ経験を生かしたいと考えているので、樹脂の業界でこれからも働いていきたいと考えています。加工メーカーの営業として、よりモノづくりへ近い立場となりましたので、専門知識やスキルをもっと身に付けて、お客様へ貢献していきたいなと思っています。
今、御社はどのようなステージを迎えているとお考えですか
生産管理のシステムが30年ぶりに変わりましたし、今まさに、変革の時期に入ってるんじゃないかなと感じています。私を含め営業2人も新たに追加して、そういった意味でも新しい風を入れると言いますか、「会社を変えていきましょう」という経営陣のメッセージを感じますね。ただ一方で、「和」を大切にした社風はこれからも失わないように、会社の改革を進めていってもらいたいと思いますね。殺伐とするというか、「お前が悪いんだ」と言って、否定ばかりしている会社ではなく、これからも「こうやれば良くなるんじゃないか」と前向きな意見を交換できる会社であり続けてほしいと願っています。
求める人物像と、これから入社する方へのメッセージをお願いします
これはどこの会社もそうかもしれませんが、明るい方が良いですかね。あとは、当社で言うと、「モノづくりが好きな人」に来ていただきたいと思います。お客様と製品の実現に向けて協力していくのですが、やはり上手くいかないことも当然ながらある中で、それも楽しむくらいの考え方がベースにないと、その人にとっても、そしてお客様にとっても良くないかなと思います。あと、当社に入社してくる方にメッセージがあるとすれば、当社は、言いたいことは言いやすい環境で、「こうしたいんですけど」と自分の考えを示せば、実現していくことは難しくないと思いますので、自分の意思や思いを大切にしてほしいと思っています。
担当者からのコメント
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監修企業 担当者
「プラスチックの総合加工メーカー」として様々な製品に関わっていらっしゃる企業であり、私が見たり使ったりする製品に、同社の技術が使われているのだと考えると、その価値の高さを感じることができます。これから加納社長を中心に次世代に向けた様々な取組みが実施され、より強固で素晴らしい企業になっていくということで、とても注目の企業だと思います。
掲載企業からのコメント
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株式会社シンシ からのコメント
この度は、弊社について発信する機会を頂きまして、ありがとうございました。「プラスチックの総合加工メーカー」としてこれからもお客様のモノづくりに貢献していくとともに、次の世代に向けた改革を進め、より強い会社にしていきたいと考えております。今後とも、よろしくお願い致します。
企業情報
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創業年(設立年)
1952年
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事業内容
プラスチック板加工とその販売
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所在地
東京都大田区下丸子2-17-4
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資本金
3,000万円
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従業員数
64名
- 会社URL
沿革
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1952年~2004年
1952年
会社設立
東京工場設立
1953年
東京工場移転
1981年
佐野工場設立(栃木県佐野市高萩町)
1984年
佐野工場増設(第2工場)
1988年
水槽工場設立(栃木県佐野市富岡町、重合接着専用工場)
1992年
北関東工場設立(栃木県安蘇郡田沼町、現在の佐野市山形町)
北関東工場設立に伴い、佐野工場などを閉鎖し移設統合
2004年
東京工場新設
取材趣旨:企業インタビュー