日本が誇る伝統と挑戦の革新企業

取材趣旨:企業インタビュー

株式会社マルヒは長野県飯田市で創業した精密モーター製造のエキスパート。部品加工から装置製造まで幅広い技術を有し、多品種小ロットを軸として受注している企業である。創業から50年を超える伝統ある企業でありながら、今まで積み上げてきた技術を生かし、小水力発電機の製造など現代の社会が求めるものに合わせた開発や製造にも力を入れている。社長就任当時、労働集約型の色が濃い状態であったマルヒに、後藤社長は挑戦する風土を浸透させ開発型企業へと着々と歩みを進めている。会社に新しい風を吹かせた後藤社長に詳しく話を伺った。

  • 株式会社マルヒ

    代表取締役社長後藤 大治

    新しい時代の
    ものづくりをめざして。

    当社は昭和43年に創業し、半世紀に渡りものづくり一筋で事業を行ってまいりました。
    当社のキャッチフレーズである「未来を想像し未来を創る」は、これから訪れる未来を私たち自身が想像し、当社独自の技術て未来を創って行こうとの決意であります。このキャッチフレーズを合い言葉に、もの作りのスペシャリストとして、日々、技術の研鑽に努めています。
    創業以来、精密モータの製造を事業の柱とし、FA関連機器に使用される精密モータや半導体関連、自動車関連、エレベータ関連に至るまで、様々な分野で使用されるモータ、省力化機器を製造しています。
    これらの分野では、高品質・高信頼性が求められる分野であり、品質面においてもお客様より高い評価を頂いております。
    また、様々な工作機械も導入し、部品加工から組み立てまで一環して対応できる体制も整っており、試作品から量産品までの対応も可能にしています。

    環境分野においては、モータ製造で培ってきた技術を応用し、再生可能エネルギー事業として、小水力発電システムの開発・製造・販売まで、当社独自の技術を元に取り組んでいます。この事業では、大手企業様でも御採用頂き、国内外において設置実績も増え、自然に優しいエネルギーとして、普及が始まっています。
    未来の子供達にとって必要な設備として認知されるよう、今後もこの事業を育てて参ります。

    SDGs推進企業にも登録し、未来に向けた取り組みを行っています。
    当社が立地する長野県飯田市は、中央リニアエクスプレスが今後開通する予定であり、将来は東京から45分、名古屋まで15分という他に例をみない可能性を秘めた地域となります。
    我が国のハイテク拠点としても、各方面からの注目を集めています。
    更なる高信頼・高性能・高品質の「ものづくり」に邁進していきますので、皆様方の倍旧のご指導ご鞭撻を賜りますますよう、お願い申し上げます。

目次

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

社風

何事にも挑戦する

「何事にも挑戦する。私たちはそんな気持ちで事業に取り組んでいる」と語る後藤社長。元々、売上の9割を1社が占める状態だった同社。安定した基盤ができていたが、その安定性ゆえに社長に就任した当時は「挑戦しなくても会社は存続する」という空気が流れていたという。「資金もない、設備もない、開発技術者もいない。あるものは古い設備だけで、せっかく培ってきた技術を生かせていない」そんな状態だったと後藤社長は話す。「このままでは自社は淘汰される。何とか開発力を付けたい」という想いから生産技術部門を立ち上げた。これが「何事にも挑戦する」の原点である。それからは小水力発電機事業を独自に開発したり、設備開発を進めたりして、新しい挑戦を続けるようになったという。新しく始めた事業の売上の全体に占める割合は少ないそうだ。売上になるかどうかも大切ではあるが、まずは何事にも挑戦する。この風土がマルヒに存在している。

独自性

ハイレベルな製造技術と設備開発力が会社を支える

同社を支える強みとして後藤社長は2つの要素を上げた。
1つ目はモーター製造において全工程で高度な技術を持つことだ。モーターは用途によって異なる製造技術が求められる製品であり、製造においては様々な工程が必要となる。そんなモーターであってもマルヒの技術やノウハウがあればどんなものでも製造できるという。加工において9割以上は内製化できるため、外注がほとんど必要ないことやモーターにおいては何でも対応できるという強みがあり、多品種小ロット生産を可能にしている。
2つ目は独自の設備設計と開発ができることだ。自社にしかないものをつくることができる点が競合他社との差別化になっている。
今後は、モーターの製造技術に活用されているモーションコントロール技術、設備設計や開発力というそれぞれの強みを生かし、生産設備や自動化設備の開発を進め、より開発型企業となるべく日々の挑戦を続けていく。

展望

未来を想像し未来を創る

「夢は『未来を想像し未来を創る』の一言に尽きると考えます」と熱く語る後藤社長。このキャッチフレーズには強い想いを込めているという。『未来を想像し未来を創る』について詳しく聞くと「世界の情勢、日本の情勢、地球の環境を勉強し、想像し、これから何の技術が必要になるのかを考える。そして当社はどのような技術で社会に貢献出来るかを考え、実行できる集団となることが会社の夢であり私の夢」だそうだ。現在取り組む再生エネルギー事業はこの夢を叶えるための1つの手段。社会に目を向け、自社の技術を生かして世の中に求められているものを提供していくことを目指しているという。「マルヒが積み上げてきた技術的ノウハウがあれば社会の役に立つ製品を製造することができる」という自信や想いが後藤社長の中にはある。「想像力や技術力を生かし未来を創っていく」そんな企業であるために日々チャレンジを続けている。

新しい挑戦を続ける2代目

夢を叶えるために必要となる人材について教えてください

企業にとって人材はなくてはならない存在ですし、最も大切だと思います。マルヒが人材に求めることは「チャレンジ精神」ですね。大手であれば買収を通じて規模を拡大していくことがありますが、私たちのような企業は日々のチャレンジの積み重ねによって成長していくと思います。だからこそ「チャレンジ精神」を持った人材が本当に大切なんです。若手がチャレンジできる風土をつくるために、上司もチャレンジしていく会社でありたいですね。加工や設計などの技術力も会社の発展に不可欠ですが、その根本にチャレンジ精神があってこそだと思います。チャレンジ精神のある人材を採用し、技術力を向上させるための教育をしていくことが成長のカギになりますね。

今までチャレンジしてきたことについて教えてください

開発力が足りないと感じたら開発部門を立ち上げる、道具や設備がないなら補助金を活用して導入する、導入した機械をうまく活用できないなら技術者を育成する、加工技術が身に付いてきたなら更に新たな加工方法にチャレンジする、というように常に生まれてくる新しい課題にチャレンジし続けてきました。そのようなチャレンジを続けてきたからこそ設備開発が強みとなっていますし、再生エネルギー事業にも取り組めています。
このようにつくり上げてきた新しい強みや事業をさらに強化するべく、これからもチャレンジを続けることで労働集約型だった会社を一歩ずつ開発型企業へと近づけています。

次世代に会社を残していくために大切にしたいことを教えてください

技術力と経済力を兼ね備えた会社とした上で後継者に引き継いでいきたいですね。そのような状態を作るためには先ほど話した人材に加えて、設備の導入や営業力の強化が必要です。加工技術において、職人の持つ技術を生かすためには機械の質の向上が必須だと考えます。そのためには資金が必要となってきますね。資金という点では、補助金の活用はもちろん、自社の売上の向上も急務です。9割は1つの会社から受注しているため、これまでは営業力がなくても立ち回れましたが、経済力をつけていくには自ら営業して製品を提供していくことが大切になってきます。技術力と経済力の向上を通じて安心できる状態で後継者に会社を引き継いでいきたいですね。

  • 現在力を入れている小水力発電機

  • マルヒが手掛けるモーター群

  • 工場の外観

後藤社長から全幅の信頼を寄せられる マルヒのキーパーソン

株式会社マルヒ  常務取締役 松井貴寛

今回話を伺ったのは中途で入社し約15年マルヒに勤める松井常務。一般社員として入社し、課長、次長、部長、常務と猛烈なスピードで役員に昇格し会社のキーマンとして働いている。製造をメインの仕事としている傍らで、生産流通部門の部長も兼務している。入社当時は機械課に所属しつつも、生産技術部門にも関心を持つなど、常に会社全体に関心を持って貢献をし続けてきた。向上心が強く、時には上司や社長と衝突することがあったというが、それでも会社のことを考えて行動してきたという。現在41歳と、若くして会社を背負う存在となった松井常務に仕事のやりがいや目標などについて詳しく伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

入社理由

入社直後から会社の改革に携わる

「入社したきっかけは会長から声をかけていただけたから。これに尽きます」と話す松井常務。前職では7年間技術職を務めていたが、当時大きな自信を持っていたわけではなく、転職することに対して多少のハードルを感じていたという。前職の労働環境に不満を抱いていた時に、自分の親戚と会長(当時は社長)が仕事の関係で繋がっており、そのご縁で会長から「入れ。大丈夫だから来い」と力強く声をかけてもらえてなかったらマルヒには入っていなかったそうだ。 きっかけこそ会長の言葉であったが、入社後すぐに会社の現状に危機感を覚え、会社を変えて成長させていくために行動し続けたことで課長、次長、部長、常務と次々に昇格し現在の役職を与えられるようになったという。今では後藤社長から「松井常務が生産開発部門を動かしてくれたことや教育に尽力してくれたことで本当に助けられている」と全幅の信頼を得ている。会社を変えていくキーパーソンとしてチャレンジし続けている。

やりがい

向上心がチャレンジにつながる

「向上心があったおかげで自分のやりたい仕事ができて本当に楽しい」と楽しそうに語る松井常務。他の社員がやりたがらないことでも自分の成長や会社の成長につながるものは積極的にチャレンジすることを大切にしているという。そのチャレンジができるのは「後藤社長が何事にも挑戦することを大切にしているから」と話す。 所属は機械課であったものの、生産技術部門にも顔を出して「このようなものを作ってみたい」と発信していたことで新しい仕事を任せてもらうことができたという。また、「人と違うことをやらないと面白くない。同じ作業であっても自分なりに考えて改善をしようとすることが大切」と力強く話す。このような姿勢を持ち続けたことで、小水力発電の開発などあらゆることにチャレンジする責任を与えられたため、今では「設計を自由に任せてもらえて、自分が完成させた製品が世の中に出た時は本当に嬉しい」と仕事に対してやりがいを感じているという。

会社の強みを強化していくキーパーソンとして生きる

「自社製品を製造すること、技術レベルを上げることが本当に重要」と力強く語る松井常務。9割が同じ取引先であるためその企業の要望に応えたら会社が安定するとはいえ、それだけではなくさらに新しい価値をつくっていきたいと感じているという。技術的ノウハウがあるからこそ、もっと自社製品で強みをつくっていくことを目指している。新商品を世のなかに出していくためにマーケティングや営業のレベルアップを進め、製造することと販売することの両輪の強化に力を入れていくという。また「今は設計が楽しいからずっと続けていきたい」と語る。昔は仕事を続けたいとはあまり考えることはなかったというが、今では誇りを持って楽しく仕事に臨むことができているという。個人としては世の中の変化を自分の目で見て、この変化に携わっていくことを大切にしていきたいそうだ。現在41歳とこれからも長くマルヒを支えていくキーパーソンとして日々挑戦を続けている。

  • 製造現場の様子

  • 創立50周年記念祝賀会の様子

  • 生産技術部門の様子

未来を見据えて挑戦を続ける

会社の変革を進める上でどのようなことがあったのかを教えてください

直属の上司とよく衝突しましたし、後藤社長(当時の専務)ともよく喧嘩したことが印象的ですね。何度も衝突していたものの、ある企業の下請け会社という状態であったことに対する危機感と開発型企業を目指している点は同じ考えだと気付き、主に後藤社長と共に会社の変革を進めてきました。当初は会社を変えるというよりも自分自身と自分の周りから良くしていくという視点で仕事に取り組み、今では会社全体のことを考えて仕事に取り組むことができています。「若い人にも夢を与えたい」と日々後藤社長が発信し実行しているからこそこのような挑戦ができています。これからも乗り越える課題は多くありますし、日々挑戦を続けていきます。

開発型企業になるために必要なことを教えてください

1つの強みだけに依存するのではなく、加工力、設計力、営業力など、企業として必要なこと全般のレベルを向上させていくことが重要です。そのレベルを上げるために重要になってくるのは人材です。とにかく向上心を持ち常に成長し続ける存在が必要になってきますね。その向上心は会社のためでも自分のためでも何でも良いと思いますし、単純に頑張りたいという気概を持って働く人をもっと増やしていきたいです。また今まで製造に従事し、技術において精通している人を営業担当にすることで、開発した製品についてお客様の前でしっかりと説明できる人材がいると開発をさらに進められると思います。

若手に継承していきたいことについて教えてください

実務が中心の私の視点だと、技術の継承が本当に重要だと思います。そのためには、根っこにあるマルヒイズムとも言えるチャレンジ精神を浸透させていくことが本当に重要です。チャレンジ精神を持ち、仕事にやりがいを感じてこそ、技術を身に付けたいと思いますよね。
マルヒイズムの浸透のためには、まずは自社の強みを理解しその強みを生かしていく働き方をできるようにしていく必要があります。技術の継承は座学でも継承できるものはあると思います。このようにして技術の継承をしていくことがアイデアを生みますし、基礎技術があってこそ思いつくものがあると思います。だからこそ技術の継承が重要な要素であり、その根っこにあるマルヒイズムの浸透が最も重要です。開発型企業になるために私自身もチャレンジ精神を持ち続けて仕事に取り組みます。

担当者からのコメント

  • 監修企業 担当者

    この度は取材にご協力いただき、誠にありがとうございました。
    2代目として挑戦を続けてきた後藤社長と常に会社の先頭を走り続けた松井常務の言葉の深みに大変感銘を受けました。
    開発型企業を目指し、さらに進化した株式会社マルヒを見られることを心より楽しみにしております。

掲載企業からのコメント

  • 株式会社マルヒ からのコメント

    取材していただき、誠にありがとうございました。 このように振り返ってみることで自分自身何を大切にしているのか、どんなことを乗り越えてきたのかに気付けた気がします。改めてマルヒイズムを大切にしていきたいと思うことができ、仕事に対してさらに気合が入りました。

企業情報

  • 創業年(設立年)

    1968年

  • 事業内容

    ■小水力発電機
    ■DC モータ、ステップモータ、AC サーボモータ、リニアモータ、エンコーダ、バイオ装置の部品加工から組立までの一貫生産
    ■航空機器、ポンプ、アクチュエータの組立

  • 所在地

    長野県飯田市桐林2668番地

  • 資本金

    3,000万円

  • 従業員数

    男:45名 女:45名 計90名

  • 会社URL

    https://maruhi-inc.com/

沿革

  • 1968年~1999年

    1968年
    多摩川精機株式会社協力工場としてインストルメントモータ部品加工及び組み立て工場として発足

    1971年
    有限会社丸日製作所に社名変更

    1976年
    機械工場及び組み立て工場150坪を増設、本格的ステップモータの量産を開始

    1980年
    NC 旋盤導入

    1982年
    DC モータ及び、光学シャフトエンコーダ部門150坪を増設、組み立て開始

    1985年
    自動歯切盤その他自動機導入

    1994年
    航空計器組立

    1997年
    有限会社マルヒ設立

    1998年
    ISO9002 認証取得

    1999年
    有限会社丸日製作所と有限会社マルヒが株式会社マルヒに改組
    新社屋完成

  • 2001年~2018年

    2001年
    ISO14001認証取得

    2006年
    ISO9001へ移行

    2007年
    リニアモータ生産開始

    2012年
    小水力発電機 すいじん3号、かるがもくん 開発

    2013年
    豊田自動車元町工場へすいじん設置

    2014年
    レッドストーン発売開始

    2015年
    伊賀良井農業用水路にて「ME074」実証実験開始

    2017年
    「レッドストーンラージ」NAGANOものづくりエクセレンス2017認定

    2018年
    伊賀良井用水にて飯田市の地域環境条例の事業認定を受けた売電事業開始
    飯田市長寿企業表彰受賞(創立50周年)

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