取材趣旨:企業インタビュー
谷沢製作所は83年もの長きに渡り、産業安全保護具メーカーとして、ヘルメットや安全帯の製造・販売を通して、人々の命を守り続けてきた。実は日本で初めて、産業用ヘルメットを製作した企業であり、その高い品質と実績から、現在では防護ヘルメット業界において、世界のトップメーカーに数えられている程だ。今回取材をさせていただいたのは、創業者・谷澤末次郎氏の血を引く5代目の谷澤和彦社長。谷澤社長は、同社の使命を『人の生命を守り、頼られること』と据える。既存の枠に囚われず、また、成功体験に甘んじることなく、人々の生命を守るために、常に、常に歩んできた谷沢製作所。80年という歴史を超えた今、100年企業へと更なる歴史を紡いでいく谷沢製作所に迫る。
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株式会社谷沢製作所
代表取締役社長谷澤和彦
研究開発に力を注ぎ、もの作りを通して社会に貢献してまいります。皆様の声、社会の要求に耳をかたむけ、 新たな課題に挑戦し、創造してまいります。
目次
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
『働く人の命を守る』使命感
『当社の社員は、命を守ることに対する意識が非常に高く、自分が社会の安全に貢献するんだ、という想いは私以上です』と谷澤社長は誇らしげに語る。安全を第一に、と使命感の中、働くのが谷沢製作所の姿である。
また『当社の社員は、命を守るという意識を現場の中で身に付けていきます』と谷澤社長。社員は現場で、事故の発生や死傷者が出ているという現実に向き合いながら仕事をする中で、同社の製品があれば助けられた命もあったことを実感し、日々使命感を増していくという。そして、同社の社員は谷沢製作所の存在意義と社会貢献性を認識し、今の自社に足りていないもの、お客様が本当に必要としているものを考えていくようになる。『自分の仕事が人々の命を守っている』という声はどの社員からもあがっている程。現場を通して人の命を守る意識が日々磨かれる同社の社員。それが使命感へと変わり、日々の仕事に繋がっていく。それがタニザワなのである。
あらゆるニーズに応えていく
常にお客様のニーズに応えるために、長い歴史の中で様々な製品を開発し、業界屈指の豊富な品揃えで常にお客様のニーズに応えてきた。これがタニザワの独自性である。
例えば、『防災時にヘルメットは大切だけど、持ち運びが大変』という声には、携帯できるように折りたたみができる防災ヘルメットを開発。『作業状況、作業員の様子を正確に把握したい』という声には、通信機能とヘルメットが一体となった製品を開発。同社はこのようにお客様のニーズに真摯に向き合ってきた結果、数多くのお客様からの信頼を勝ち取り、国内の約40%という圧倒的シェアを誇るまでに躍進した。また、お客様のニーズに応えた提案ができるようにと日々努める中では、社員同士が互いを想うあまりに衝突する時もある。それ程までに社員一人ひとりがお客様のために努力を惜しまない。『お客様のニーズに応えられないという状況を作らないように、常日頃から技術を研鑽し、製品開発に力を注ぎます』と谷澤社長は決然とする。
『人の生命を守る』を軸に続く挑戦
『今まで培ってきた当社の技術を守り、かつ進化させ、他の分野にも事業を広げます』と谷澤社長は未来を語る。同社は今後、80年以上培ってきた技術と経験を武器に、『高齢化』という社会問題にも向き合っていく。例えば、介護の現場において、介護をする側も高齢というケースが想定される。その中では、介護中に怪我をする可能性も大いにあるだろう。そこで同社は、介護をする側の安全を守るために新たな製品開発に挑んでいる。
また、工事現場における作業員の高齢化も進んでいくため、年配の方でも安全に作業ができるようにと、筋肉の動きをアシストする先進的な製品の開発も進めている。『刻々と変化する現代の情勢において、今まで通りのことをやっていては先はありません。当社の技術を生かして、社会のニーズに合わせたモノづくりをしていきます』と谷澤社長。創業時から変わらぬ『人の生命を守る』ことを軸に、タニザワは挑戦の手を緩めることはない。
業界の牽引する者としての誇り、命を守るために挑戦し続ける精神
タニザワの社員に期待することを教えてください
今まで以上に当事者意識を持って自らの仕事に臨めるようになってもらいたいです。現場社員が、『こんな製品があれば良いのでは』と自らお客様の要望をより一層汲み取れるようになることを期待していますし、今後の発展のために必要なことです。もちろん弊社の社員は、常日頃から高い意識を持って仕事をしていると感じます。以前、タニザワが社会に向けて何をしなければならないのか、と私から社員に対して問いかけたことがありましたが、彼らの表情を見ていると既に理解しているように感じました。東日本大震災の時も、建物の崩落や、落石などで怪我をする方々を見て、『一般の方の防災意識の向上が今まで以上に必要になる』という声は社員からあがったのです。ですが、この意識はこれからもなお、磨いていかなければなりません。より一層のタニザワの成長のためにも、社員が自ら現場で、何が必要なのか、どうすれば良いのかを考え、行動することを期待しています。
社長が大切にしている心掛けを教えてください
【謙虚さ】と【出会い】を大切にしています。私は今まで、謙虚さを忘れ、良い人間関係の構築が出来ず、失敗していく人を数多く見てきました。だからこそ、私は『常に謙虚であれ』と心掛けています。私自身、先代社長の息子として入社しましたが、まずは皆と同じ目線で働く必要があると考え、自ら志願して工場で働きました。また、人生において【出会い】は非常に重要です。入る会社が異なれば出会う社員も異なり、結婚する人が異なれば生まれる子も異なります。誰と出会い、何を学ぶか、それ次第で人は変わっていきます。そして様々な人と出会うことで素晴らしい人間性へと磨かれていきます。当社の社員も、謙虚さを持ってお客様と向き合い、出会いを大切にして人間性を磨いていき、出会った人に『この人と仕事がしたい』と思ってもらえる様な人になってもらいたいです。
創業80年を超える企業として、大切にしていきたい考えは何ですか
現状に甘んじない、ということです。当社は世間から見れば老舗となりますが、老舗という言葉に甘えてしまえば、足元をすくわれかねないと考えています。『老舗だから潰れない』『老舗だから一定数やっていれば安定的だ』このような考えでは、企業に先はありません。お客様に当社の製品を使い続けてもらうため、常に『人々の安全のため』という原点を忘れずに、失敗を恐れずに挑戦を続けていくことが必要となります。例えばヘルメット一つをとっても、内部を一新し、40年間使用してきた緩衝材である、内部の発泡スチロールを無くした革新的な製品もあります。これにより、『軽いし、涼しくて着けやすい!』と装着していただけるケースが増えました。社会において、現状維持は退化を意味します。これからも、老舗ということに甘んじることなく、挑み続けます。
このカッパ帽から始まった歴史
全ては現場の安全の為に
豊富な品揃えで安全をサポート
仕事を通して、 人の命を守るという使命を果たす

株式会社谷沢製作所 営業担当 中川太郎
今回お話を伺った中川さんは、入社2年目の若手社員だ。『人の命を守りたい』という想いから、保護具を通して命を守るタニザワの理念に共感し入社。中川さんは営業として日々お客様と向き合い、ヘルメットと安全帯を中心に新規開拓と既存顧客のサポートを進めている。また、今後は大きな案件とも関わっていき、より多くの人の命を守っていくために日々努力を惜しまず、精力的に活動していくという。中川さんのような若手社員が、今後も同社の製品に誇りを持ち、日々営業活動を続けていけば、同社の未来は明るいだろう。中川さんに、人の命を守ることにかける想い、タニザワで働く誇り、若手から見たタニザワについてお話を伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
『命を守りたい』という強い想いを抱き入社
『もともと人の命を守る仕事がしたかったんです』 命を守るということに対し、人一倍想いが強い中川さん。この強い想いを抱いた背景には、若くしてお父様を亡くされたという経験がある。就職活動時中川さんは、『将来は命を守れる仕事をする』ことを軸に据えていた。そして、ふとした時、偶然ラジオでタニザワの説明会案内を中川さんは耳にする。同社は保護具を通して、死傷事故が非常に多い作業現場の人々の命を守る企業として紹介されており、『多くの命を守ることに貢献するには、正にここだ!』と感じた中川さんは、タニザワの門を叩いた。また、同社の社員が、命を守ることに誇りを持って仕事をしている様子も入社の決め手になったという。『自分がもともとやりかった領域の仕事ですし、当社の製品で人の命を守る素晴らしさに魅せられましたね』と中川さんは当時を振り返る。命を守る仕事に誇りを感じながら、今日も中川さんは行く。
より多くの命を守れると実感する瞬間
『純粋に、命を守ることの出来るお客様が増えた瞬間にやりがいを感じます』 と中川さん。 今、タニザワの顧客は着実に増えている。今まで保護具を使ってこなかったお客様への納品や、製品を他社から切り替えてもらうことが数多くあり、同社を支持する顧客が益々増えている。中川さんもまた、新規営業をする中で、より多くの人に関わり、より多くの命を守るチャンスを得る日々にやりがいを感じている。競合他社も数多く乱立する中で、時には新規営業では門前払いも珍しくない。しかし、『タニザワのヘルメットは軽い上に、外れにくくて、使って良かった』などの感謝の声を貰う度に、中川さんの仕事への情熱が増していく。同社の製品の素晴らしさを再認識する瞬間である。こうした新規営業を通じて、新たに納品先を増やすことは、同時により多くの命を守ることに繋がっていく。『タニザワの営業とは、助けられる命を増やすこと』。この想いの下、中川さんはこれからも営業に心血を注ぎ続ける。
大きな案件を通して、多くの感謝の声を
『今よりも大きなプロジェクトにどんどん携わっていきたいです』と中川さんはその夢を語る。タニザワの関わる案件は、近年の東京スカイツリーのような大規模な工事も数多くあり、こうした案件に対して、保護具を提供して多くの作業員の安全を守っている。実は、作業現場での労働災害の死傷事例は年間11万件に及ぶ。今後も中川さんはこの数の削減に努めていく。『作業現場での死傷事故は後を絶ちません。全て無くすことは出来なくとも、当社の製品を通して、一人でも多くの命を救えるなら、どんな努力も厭わないつもりです』と中川さん。東京五輪に向けて増加する建造物の工事、国立競技場の工事など、これからも大規模案件は増えていき、タニザワの存在意義は一層に増す。同社の保護具を通して、多くの人々の命を守っていくことが中川さんの目標。今後も、中川さんは夢と使命を果たすことに努めていくだろう。
常に、常に技術革新
安全の為に徹底した品質管理
お客様の声から生まれる新製品
お客様の安全を第一に考え、現場からタニザワに革新を生み続ける
タニザワらしさを教えてください
同じ信念を持って、お互いに高め合うところであると感じています。当社の社員は皆、お客様の安全を第一に考えていますし、お互いを仲間だと考えていますが、決して慣れ合うような関係ではありません。競い合って、お互いに仕事への情熱を日々高めています。私には同期が一人いますが、仲間と同時にライバル関係でもあります。同期も仕事への情熱は非常に高いです。互いに近況報告をした時や、社内の広報誌の中で同期の活躍を知ると、『アイツには負けられない!』と私も今まで以上に仕事に熱が入ります。今後も、同期に限らず、より一層切磋琢磨していける関係でありたいです。
貴社の商品開発へのこだわりを教えてください
お客様の期待や不満の声ときちんと向き合い、製品の改良に反映させる、という点です。【お客様の声は、命を守るための声】という認識で働いているので、お客様の声には、全霊を以ってお応えします。例えば、当社の製品に『エアライト』という製品があります。これは、衝撃緩和のためにヘルメットに必ず必要であった、内部の発泡スチロール部分を取り除いた画期的な製品です。従来のヘルメットは、発泡スチロールのせいで『暑い』『蒸れる』というお客様からの声がありました。暑さのせいで、ヘルメットが正しく着用されないケースも現場ではあります。それでは命を守れないと考え、当社の技術の粋を集めて、『エアライト』は生まれました。このように要望一つひとつにもお応えすることで、結果としてお客様の安全に寄与しています。お客様の声は当社にとって財産なのです。
100年企業に向けて重点的に取り組むポイントはどこでしょうか
製品を日々進化させることです。市場は刻々と変化します。当業界の市場は男性が中心で、従来のニーズに対応することも大事ですが、近年は作業現場で働く女性が増えてきたので、女性用のヘルメットを開発したりと、市場の変化に柔軟に対応できるようにと努めています。また、今後の作業現場はより高齢化が進むので、例えば従来の安全帯では作業員の体を支え切れないなど、安全をカバーし切れない事例が出てくる可能性があります。そのため、従来の製品の効果性を正しく把握した上で、現場の状況を社員がいち早く察知し、製品へ反映させていく必要があります。当社の製品は現場のあらゆる危険に対応していますが、危険というものは思わぬところにあります。従来の製品の枠に囚われず、製品を進化させ続けることが、100年企業に向けて、必須事項だと考えます。
担当者からのコメント
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監修企業 担当者
業界のリーディングカンパニーということに甘んじることなく、常に挑戦を忘れない谷澤社長のエネルギーを感じました。谷沢製作所の社員の方々は仕事、日常生活の中で、人の命を守ることについて考え続けています。それが、谷沢製作所の社員の方々の凄みと温かさに繋がっていると感じますし、80年を超える歴史を築くことのできた要因だと考えます。安全を守ることに対する誇りを守り続けてきたからこそ、現在の谷沢製作所があります。
掲載企業からのコメント
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株式会社谷沢製作所 からのコメント
タニザワは今年で創業から83年を迎えます。 今後も100年企業に向けて、タニザワのDNAを守り、かつ成功事例に囚われずに、チャレンジし続け、社会の安心・安全に貢献し続けます。モノづくりを通して、人々の命と未来を守る、それがタニザワの使命なのです。
企業情報
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創業年(設立年)
1932年
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事業内容
1. 産業用安全衛生保護具(保護帽、安全帯、換気用風管など) および標識等の製造・販売、並びに賃貸 2. 防災用具、用品の製造販売 3. 携帯用無線機の製造販売、 並びに賃貸 4. 医療機器の製造販売および賃貸 5. 乗車用ヘルメットの製造販売 6. 上記各号に付帯する一切の事業
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所在地
東京都中央区新富2-8-1 キンシビル
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資本金
1億円
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従業員数
190名
- 会社URL
沿革
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1932年~1999年
1932年
谷沢営業所を創業
1950年
株式会社谷沢製作所を設立
安全帯の製造を開始(国内初)
1951年
換気用布風管の製造を開始(国内初)
1971年
株式会社常磐谷沢製作所を設立
1987年
軽量ヘルメット「かるメット」を発売
1994年
300gを切る夢のヘルメット「超かるメット」を発売
1999年
谷澤和彦が代表取締役社長に就任 -
2009年~2013年
2009年
カメラや通信機能を搭載したヘルメット「Uメット」を発売
2013年
「第2回カーボン・オフセット大賞」奨励賞を受賞
取材趣旨:企業インタビュー