日本が誇る伝統と挑戦の革新企業

取材趣旨:企業インタビュー

アネックスツール株式会社は、株式会社兼古製作所として良質なドライバー等の製造でプロの職人をうならせるニッチなモノづくり企業だった。2代目となる兼古耕一会長は、品質、機能、デザインといった要素でメーカー主要ブランドであるアネックスツールドライバーを立ち上げた。かつては職人の技が息づく工場として生まれた同社を、メーカーとしての新たな礎をつくった兼古耕一会長。基盤づくりを終え、息子である兼古敦史社長にバトンタッチを行った現在、兼古会長がこれまで歩んできた道のりと、今後の展望に迫る。そこから見えてきたものは、中小企業への想い、モノづくりへのこだわり、三条地域への深い愛情だった。

  • アネックスツール株式会社

    代表取締役兼古 敦史

    当社はその時代にお取引のあるお客様から要望されることを常に意識しながら商品を提供し、成長して参りました。製造している商品は同じドライバーを中心とした品目でありましても要望にお応えしている間に内容や種類が全く違うものに変遷して参りました。現在では機械や器具の生産ラインや建設建築分野また様々な機器や装置の設置やメンテナンスに使われているネジやナット・ボルト類の締め付け用工具が中心です。

    お客様の真のニーズにお答えし、社会の発展に貢献する為、英知を結集した革新的で強靭な商品を提供し続けて参ります。また仕事を通して学び、能力開発を日々実践しつつ成長できるよう社員一同努力して参ります。今後とも宜しくご愛顧をお願い致します。

目次

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

社風

妥協しない、ものづくりへのこだわり

アネックスツール株式会社の兼古耕一会長に、企業の社風について尋ねた。その社風は、ブランド名ともなるANEX「Action : Nice & Excellent」という言葉に表れている。これは、「行動しよう:よりよく、よりすばらしく」という意味を持ち、アネックスツールの社風を象徴している。
創業時から三条のものづくり企業の技術者としてスタートし、隆盛期には全国で必要とされるメーカーとして成長。しかし、今後は、社員一人ひとりが未来を描き、自ら未来を築いていくことを強調している。
アネックスツールは時代とともに変わる事業規模や技術環境に柔軟に対応しつつも、「よりよく、よりすばらしく」というモノづくりへのこだわりを妥協せず軸に据え、常に進化し続けている。兼古会長は、これからも企業が妥協することなく、高い品質と使いやすさを追求し続ける姿勢を明確に示していた。

独自性

ニーズではなくウォンツを満たすこと

同社の主要製品であるドライバーは、誰もが手にする日用品でありながら、アネックスツールが製作するものは、職人さんなど“技術”で生活するプロたちのためのものだ。兼古会長は、このプロたちの小さな要望に耳を傾け、実現させることで、彼らをうならせる品質を築き上げてきた。
アネックスツールは、プロのニーズではなく、その先の細やかなウォンツに焦点を当ててきた。これにより、製品の技術や特性が進化し、他の製品にも展開され、ブランドANEXが確立していった。アネックスツールの技術は、個人向けの製品だけでなく、大手メーカーのOEMとしても高い評価を受けている。
兼古会長は、「ニーズではなくウォンツを満たすこと」が企業の持つ真の独自性であり、この独自性を磨き続けることが、アネックスツールの発展の秘訣であると語っている。

展望

三条という地域、そして日本企業のモノづくりへ

兼古会長は、学生時代から中小企業経営に関心を寄せ、卒業後も中小企業振興に関わる機会が多く、アネックスツール(当時は兼古製作所)入社後も、地域行政や地元企業振興に積極的に関与し、自社の運営と共に地域の発展に貢献してきた。
同社のブランド立ち上げによって事業基盤を築き、後継者である息子の兼古敦史社長に経営のバトンを渡した今、兼古会長は商工会議所の会頭職として三条市、そして中小企業の未来に向けた活動に尽力している。会社のバトンタッチには約10年を要したが、その経験を活かし、今後も三条のモノづくりの振興に更なる貢献をする意向を示している。このことから、兼古会長の三条地域への愛情は深さが伝わる。
また、兼古会長の視座は非常に広く、日本企業全体のモノづくりにも目を向けている。日本のモノづくりは世界的に高い評価を受けており、その伝統と技術を継承し、さらなる発展を目指すことが重要であると述べた。

行動しよう:よりよく、よりすばらしく

ANEXというブランドの立ち上げの経緯を教えてください

「ウチは良いものがつくれる」という自負がありますけど、市場の変化に敏感に対応する必要性を感じていました。当初は車やミシンへの搭載工具として工場に商品を卸していましたが、量販店に自分たちの商品を並べるために、アネックスというブランドを立ち上げました。
ANEXの由来は、「Action : Nice & Excellent(行動しよう:よりよく、よりすばらしく)」。デザインやブランドイメージにこだわり、様々な案を検討した結果、ANEXというブランド名が生まれました。ア行から始まることでメリットもあります。例えば、「電話帳に上に出てくるとか(笑)
また、ネットなどの影響で販売形態が変わり、兼古製作所は検索されにくく、一部のマニアしか選ばれない状況に直面しました。そのため、兼古製作所からアネックスツールへ社名を変更しました。その結果、社員たちにとっては家業の従業員ではなく、メーカーのスタッフとしての新しいアイデンティティに繋がっていると思います。

社長に伝えたいこと

事業承継には、長い時間を掛けて準備とイメージを固めてきました。事業基盤や、組織の体制は作ったが、今後起こる外部環境の変化は、社長と社長を支えるメンバーで乗り切っていかなければならないと考えています。ただ、経営者が全部自分でやる必要はないと思っています。当社を支え続けてくれている優秀な社員と協力し合える関係作りが最も大事です。
自分は文系で経営を学んだが、彼は工学系の出身、強みも考え方も違うので、そこは自分自身で将来を描いていってほしいと思っています。そして、彼のモノづくりへの姿勢と、状況を読む力を信頼しています。
だから、今はなるべく口出さないようにしています(笑)

会長の今後の活動や自身の役割はなんでしょう?

代表はバトンタッチしましたが、今もデザインに関することは、自分が関わらなければいけないと考えています。なぜなら、アネックスというブランドはデザインにこだわって成長を続けてきたからです。
一方、商工会議所の会頭の任もあり、地域活性や中小企業振興の取り組みは自分の役割だと思っています
労働人口が減る中で、いかに企業価値を高め、競争力を持つか、ということは日本の中小企業、特に地方の企業にとって非常に重要なテーマなので、今でも様々な勉強をしています。中小企業に貢献したいという想いは学生時代からずっと変わりません。お世話になってきた、三条市という地域に恩返しがしたいと考えています。

  • 創業時の社屋

  • アネックスのドライバー

  • 創業時の製造状況

後継者としての覚悟を胸に、 「自分だからできること」に邁進する

アネックスツール株式会社 代表取締役 兼古敦史

アネックスツール株式会社を現在引っ張る代表取締役”兼古敦史”社長を紹介する。兼古社長は幼少期から、後継者としての役割を自覚し、2012年に入社後は開発部や営業部を経験し、同時に役員として会社の運営にも関わった。
先代(父)社長は、兼古製作所からアネックスツールと屋号を変え、ドライバーを主とした工具のリーディングメーカーとして事業基盤を築いた。3代目として、期待とプレッシャーがある中で、自らの道を切り開く覚悟を持ち、会社を成長させる使命感を持つ兼古社長。
チームワークと組織改善に焦点を当て、社員との協力で組織の未来を築き上げることを重視している。現在の市場が縮小する中、アネックスツールはニッチなプロが求める品質とスピーディな対応力を武器に、新たな挑戦に臨んでいる。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

入社理由

後継者としての覚悟

アネックスツール株式会社代表取締役、兼古敦史氏。大学で機械工学を学び、テレビでおなじみのロボットコンテストで部長として活躍する経験を持っている。幼い頃から、プラモデルやミニ四駆など、モノづくりへの興味があったと語る。強い意図を持っていたわけではないが、4人兄弟の中で、子供の頃からなんとなく“自分が後継者となる”イメージを抱いていたという。そのイメージは、幼稚園の卒園文集に書かれていた「父の跡を継ぐ」という文章に現れている。 入社後は開発部で3年、営業部で5年と、異なる部門を経験したが、同時に入社時からは役員として会社のかじ取りにも携わってきた。父が10倍に伸ばした業績。この成功には期待と同時に、兼古社長には大きなプレッシャーもあったという。しかし、父と同じ道をたどることではなく、自らの手で企業を成長させる使命感が芽生えた。後継者としての覚悟を胸に、「自分だからできること」に焦点を当て、兼古社長は新たな挑戦に踏み出し、アネックスツールは未来へ向けて進化を遂げている。

やりがい

チームで組織の未来を描く

多くの中小メーカーの特性として、製造が強く、営業が弱いという構図が生まれることがある。 入社時から、兼古社長は組織の連携やトップの強いリーダーシップに依存しないチームでの組織図を描いてきた。先代(父)とは異なる持ち味を認識し、お互いが技術やノウハウを共有し、多能工化してパフォーマンスを最大化させることを強調している。兼古社長が組織に注力したのは、“改善”という思考の浸透。方向性を示すことで社員が具体的なプロセスを自ら考え、推進できる体制を築くことで、“自走できる”組織を構築した。具体的には、入社3年後から改善事務局を作り、自ら先頭に立ち、改善活動を推進したという。その経験により、社員からも信頼が得られたという。また、経営陣を事務局メンバーに巻き込み、他の模範となるべく、率先して改善活動を行ってきた。アネックスツールは、部や係という概念を超え、会社というチーム全体で組織の未来を描き、共に成長していくやりがいを追求している。

世界市場を見据えて

現在、同社の需要は90%が国内に依存している。しかし、日本は少子高齢化の波から市場が縮小することは目に見えているため、今後新たな挑戦が必要になる。 10年、20年と長期的なビジョンを掲げることも重要だが、同社の強みは、ニッチなプロが満足する技術品質にあるため、小さな変化にスピーディに対応し続けることが求められる。 開発、営業が連携して製品づくりができるので、ウォンツが見えたときの対応力はとても高い。一方で、事業を拡げることや市場づくりの差し迫った課題でもある。ただし、兼古社長は単なる売り上げ増加ではなく、地に足をつけた経営を行い、社員のやりがいが向上している状況が幸せだという。そうした会社の未来像をトップだけでなく、次世代の幹部人材がお互い切磋琢磨し、チームとして会社の未来を築いていくこと、そうすることでいつかANEXブランドが海外で認知される日は遠くない。

  • 改善活動の様子

  • 同社のロゴ写真

  • 商品開発する社員

モノづくりへの想いと、ブランドへの自信

事業を受け継ぐうえでのプレッシャーは?

入社から1年は、事業を受け継ぐプレッシャーに苦労した気もします。いきなり、常務取締役だし、自分でハードルも上げて、一人で抱え込んでいました(笑)そんな時に、一人ではなく、皆と一緒に働く重要性を感じました。考え方を変えた結果、皆が受け入れてくれるようになったと思います。これまでアネックスツールは、カラフルな工具をきっかけに、数億から20億と右肩上がりで成長を続けてきました。自社ブランドを0から作り、基盤を作った先代である父を尊敬しています。ただ、私は先代を超えたいとかはありません。これまで築いてきたアネックスを拡大したいと思っています。そうやって、地道に課題に取り組んでいたら、アネックスツールの発展という一本の道に繋がっていると考えています。

新しい体制での組織づくりで意識していることは?

組織づくりの中で意識していることは、個人に依存する技術・ノウハウの見える化と共有ですね。
なぜなら、10年かけて覚える技術や匠の領域のような“あの人しかできない”というものを無くしたかったからです。そのため、入社してから、多能工化を図るために、ジョブローテーションに取り組んでいます。当初は反発の声もありましたが、しっかりと社員とコミュニケーションを取って、取り組んできました。具体的には、ANEXとしてブランド化したメーカーのあるべき組織図を作り、仕事の流れの明確化を図っています。その結果、個人に依存する技術・ノウハウの見える化と共有化がなされ、誰もが能力を発揮できる状況になっていると思います。

社員とのコミュニケーションで意識していることは?

部署の距離を近づけたいので、フラットに関わるようにしています。
なぜなら、一人一人が能動的に仕事ができる環境を作りたいからです。その結果、改善活動が活発になり、会社が抱える課題の解決に繋がると思っています。その先に、アネックスツールの発展があると考えています。
自分は開発、営業の気持ちが分かるので、それぞれに良い製品を量産させるための、お互いの想いを言える環境を創っています。
それを、社員同士が自ら気づいて連携できるようになれば良いと考えて、行動してきました。その下地づくりはできています。さらにフラットに関わるアネックスを目指すことにより、能動的に動ける強いチームになりたいです。

担当者からのコメント

  • 監修企業 担当者

    お忙しい中、取材にご協力いただきありがとうございました。
    モノづくりへの想い、社長就任を見据えた改善活動、そして若いリーダーによる自走する組織体制の構築など、まさに発展できる環境が整った!という印象を受けました。益々のご活躍を期待しています。

掲載企業からのコメント

  • アネックスツール株式会社 からのコメント

    この度は取材していただきありがとうございました。取材を通して改めて、社長就任前の事と、今後のアネックスツールについて考える事ができました。入社してから時代に合わせた組織づくりと事業の展開で本当にあっというまでした。今後のアネックスツールに皆さんが興味を持っていただければ嬉しいです。2023年から公式Instagramを開設しました。最新情報をアップしてまいりますのでどうぞご覧ください。

企業情報

  • 創業年(設立年)

    1954年

  • 事業内容

    各種ドライバー、ビット、クラフトツール・ピンバイス、その他作業工具

  • 所在地

    新潟県三条市塚野目2201番地

  • 資本金

    3,000万円

  • 従業員数

    180名

  • 会社URL

    https://www.anextool.co.jp/

沿革

  • 1954年~1995年

    1954年
    三条市横町に株式会社 兼古製作所として発足
    1968年
    マイナスドライバー自動冷間鍛造の開発により科学技術庁長官賞を受賞
    1984年
    「ラチェットドライバー No.300, No.360」がグットデザイン賞に選定
    1987年
    兼古耕一が代表取締役に就任
    1995年
    「インパクトドライバー No.1900」がグットデザイン中小企業庁長官特別賞受賞

  • 2007年~2023年

    2007年
    経済産業省より「元気なモノ作り中小企業300社」に選定
    2014年
    「龍靭ビットシリーズ」と「スリム絶縁ドライバーシリーズ」がグッドデザイン賞を受賞
    「スリム絶縁ドライバーシリーズ」はグッドデザイン・ベスト100に選定
    2015年
    本社工場・増築工事竣工
    2018年
    経済産業省より「地域未来索引企業」に選定
    2019年
    第36回新潟県経済振興賞を受賞
    2021年
    日刊工業新聞社「第39回優秀経営者顕彰 優秀経営者賞」を受賞
    2022年
    アネックスツール株式会社に社名変更
    兼古耕一が取締役会長、兼古敦史が代表取締役社長に就任
    2023年
    刃先工場増築
    電設工業展「トルックアダプター」大阪市長賞受賞
    40年連続グッドデザイン賞受賞

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