日本が誇る伝統と挑戦の革新企業

取材趣旨:企業インタビュー

吉田電材工業は、第二次世界大戦真っ只中の1940年に創業し、75年の歴史を有している企業である。絶縁体部品の製造からその歴史が始まった同社。今では絶縁体部品の製造以外の分野にも次々に参入している。例えば、同社が製造を担う変圧器。変圧器を取り扱う会社はいくつか存在しているが、同社の生産体制(従業員規模)は業界トップ5%に位置するほどにその技術が支持されている。歴史の中で育まれた高い技術や製品は独自の優位性を構築するに至り、業界内における参入障壁も非常に高い。今後は「アイデアでモノづくりを進化する」というコーポレートスローガンに基づき、既存事業のみならず、新規事業にも乗り出すなど、革新的に挑戦を続ける吉田電材工業、松本社長にお話を伺った。

  • 吉田電材工業株式会社

    代表取締役社長松本匡史

    吉田電材工業は、昭和15年の創業以来着実に成長を続けてきました。
    半世紀を越えるいま、当社の事業分野は大きく広がり、さらに新たな分野への挑戦が続いています。
     また、お客さまのニーズに可能なかぎり対応しようという企業姿勢は、部品製造分野の専門性を生かした完成品への取り組みとして、自社内での設計から製造、そして検査までの一貫体制の中に生かされています。総合的な技術力は、当社の最大の個性です。各分野の技術を特出したものに磨き上げ、これをもって隣接するジャンルに果敢に挑戦したり、お客様のニーズに対してどのような技術であれば解決が可能かを考え、実行するといった姿勢こそ、今日の成長を支えてきた基盤であると考えています。
     企業活動のグローバル化が加速度的に進む現代では、個性という付加価値がない企業は淘汰されることが必定です。
    「他では得られない独自のソフト」こそ、生きる条件となることでしょう。

     当社では、お客さまや社会全体のニーズの変化を克明に見つめ、分析し、たえず独自の技術を磨いてレベルアップを図り、より高い目標に向かって力強く進み続けます。その事により、お客さまや社会に対して貢献できる企業をめざします。

目次

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

社風

代々受け継がれてきたアットホームな社風

「社員一人ひとりが楽しく働くことができる環境が大切」と語る松本社長。その背景には、75年の歴史の中で、幾度となく訪れる困難に共に立ち向かい、共に乗り越えてきた社員、そして、その社員を何よりも大切に考え、一人ひとりが一層やりがいを持って働くことのできる環境にしていきたいという想いがある。お話を伺うと、その言葉通りの環境が、現在の同社に存在することがよく分かる。例えば、同社の定着率は93%であり、定年まで勤めあげる方が多い。中には祖父、親、子と家族3代に渡って同社に勤めている一家や、兄弟、夫婦で勤めている社員もいる。そして、社内イベントも定期的に開催しており、春には花見、夏には納涼祭、秋には芋煮会、冬には忘年会と、季節に応じたイベントを開催している。こうしたことが社員が楽しく働け、長く勤めることができる伝統ある日本の企業の古き良さを生み出している。

独自性

信頼に裏付けられた、高い参入障壁

創業当時は某大手メーカーの絶縁部品の加工を担っていた同社であるが、その仕事が評価され、徐々に絶縁部品以外の製造も受託できるようになっていった。その結果、様々なモノづくりを吉田電材で一括して受託できるようになり、いつしか「図面1枚いただければ何でもお作りします」というフレーズが合言葉になった。その歴史の中で部品製造・組立外注の「サポ―ティングインダストリー」事業が確立し、それをベースに量産ラインを確立した「変圧器事業」、少量多品種ラインで設計から自社製品として展開する「医療機器事業」へと発展した。どれもすべて独自性に基づく参入障壁を有していることに特徴がある。例えば、絶縁物加工分野においては75年もの間、大手企業から信頼を勝ち取り続けており、他社の参入が困難な程、顧客との信頼関係が構築されている。変圧器事業においては、月に2000台以上もの製造を行うため、自社で製造設備まで設計製作し、他社がまねできない合理化ラインを構築している。また、医療機器に関しては、設計~部品作り~組立という一貫した生産ラインのみならず、医療器製造に必要なISO13485の取得や自社での薬事法対応など、高い専門性が必要とされるメーカーとしての事業体制を確立している。信頼から築きあげてきた同社の製品と生産体制が吉田電材工業の独自性を生み出しているのである。

展望

アイデアでモノづくりを進化する

「アイデアでモノづくりを進化する」これが同社のスローガン。単純にモノをつくるというだけではなく、アイデア、つまり「『知的財産』に目を向け、付加価値の高いモノづくりをする必要がある」と松本社長は言う。同社の戦略は、今まで培ったモノづくりの基盤をもとに、知的財産の有効活用をプラスアルファすることで、成長していこうというのである。たとえば、サポ―ティングインダストリー事業においては営業マンに「バリューエンジニアリング」の資格取得に向けた支援を行っている。これは、製品の機能性を高めるためのアイデアを提案することで、単にモノを作ること以上の価値を提供しようというものである。変圧器の量産工場においては、現場での改善アイデアをもとに、生産機械を自社で設計開発することで生産コストを下げ、競争力を維持している。そして、自社製品の医療機器においては、デザインという知的財産に着目し、他社との差別化を図る製品を開発している。同社においては、これらの形のないノウハウや技術、デザインを同社の知的財産として認識し、差別化や競争力の源泉としようとしているのである。これからの日本においても、もちろん、同社においても、知的財産は未来に向けた重要事項の1つだ。

従来のモノづくりの考えにとらわれず、新たな発想を生み出す吉田電材工業

事業を継ごうとした経緯を教えてください

私は元々、知的財産や特許戦略を主としたコンサルティングファームに勤めていました。高い技術を持つ技術系ベンチャー企業と数多く出会い、知的財産の分野で経営のサポートを実施してきました。その際に「経営が悪化している」とあるクライアント先の社長と食事をした時、経営に困窮し食事ですら切り詰めている状況で、食べながらも気が休まらず、目を赤くして心が崩れ落ちてしまう寸前まで経営と向き合っている姿を見ました。「中小企業の経営者は本当に様々な苦労を乗り越え、いつも戦っている。私の父(当時社長、現会長)も同じように苦労をし、戦っているのかもしれない」そう思い父の経営する吉田電材工業に強い関心を抱くようになりました。「当時弊社はメーカー機能を持つに至る最中ではありましたが、モノづくりの技術がありました。その技術をしっかりと収益化し、後世に残していきたい」そう思ったことが入社につながり、今もなお、大事にしている想いです。

知的財産戦略の他に、力を入れていることについて教えてください

マーケティング活動にも力を入れるようになりました。私が入社するまでは、ホームページも当時の社長が個人で作成したものがあるのみで、見栄えも内容も素人のものでした。そのような状況を受け、入社後、ホームページの改定を経て、WEBマーケティングに取り組みました。今までは、圧倒的に営業担当の人数が少ないため、長年の付き合いのあるお客様に限定したお付き合いが多く、日本の多くの協力工場がそうであるように、積極的な新規顧客へのマーケティングが不得意だったのです。WEbマーケティングを活用した第一弾が「巻線機」です。当社では自社で使用する巻線機を20年来、自社で設計製作しています。このノウハウも当社の知的財産といえるでしょう。しかし、今まで巻線機を積極的に外販することはできないでいました。巻線機を扱う会社は中小零細企業が多く、WEBで調べてもなかなかメーカーを探すことはできません。当社が専用のマーケティングサイトを開設したところ、おそらく、探している人が多かったのでしょう、今までつながりの持てなかった新規のお客様ともつながりを持つことができ、新規の受注に大きな業績を上げることができるようになりました。巻線機に関しては外国製のものも市場に流通しているのですが、導入時期が古い機会が多く稼働しており、故障が多発するというネックがあります。その修理依頼などもWEBを活用して当社が受け付けています。当社はもとより品質には絶対的なこだわりがあることから、修理を依頼されたお客様が当社の製品を購入するというケースも数多くあります。また、WEBマーケティングの第二弾として、機械加工分野のWEBマーケティングに取り組み始めました。今まで鉄材や鋳物中心の機械加工事業でしたが、従業員のノウハウ(知的財産)に着目し、インコネルやハステロイなど、難削材といわれる付加価値の高い材料の加工にチャレンジしています。すでに、これらの仕事も受注の実績ができ、今までのお客様では取り組むこともできないような新しい分野に進んでいます。このWEBを用いた営業手法のように従来のやり方のみにとらわれることなく、柔軟な考えのもと、更なる成長に尽力していきたいです。

素晴らしい社風を形成している御社ですが、結束を高める取り組みを教えてください

仕事以外の場面でも社員同士が触れ合い、コミュニケーションができる場をつくるようにしていることです。たとえば新潟事業所では、季節に応じたイベントとして、花見、納涼祭、忘年会などを会社の費用で行っています。100人規模の会ですので、一大イベントです。会社で費用を負担することで、若手の社員も参加しやすくなり、職場の垣根を越えたコミュニケーションが生まれています。また、三郷事業所では「部活動」が社内に存在していますが、そのような活動に補助金を出すとともに、奨励しています。例えば自転車部や写真部があります。また、人を大切にする創業社長の想いを継承したいと思っていることから、新潟事業所の忘年会の際には、お土産に新巻鮭を一人に1匹ずつプレゼントするという創業社長が始めた風習を続けています。こうした文化をより深めていき、より団結力のある組織づくりをしていきたいと考えています。

  • 若手も活躍中

  • アイデアが飛び交う会議

  • 2015年国際医用画像総合展

高品質を追求し、さらに喜ばれる存在へ

吉田電材工業株式会社 品質管理部 主任 長谷川健

現在入社10年目の長谷川さん。現在は品質管理部に所属し、主任という立場で仕事に注力している。これまでの10年間、品質管理という社内における重要ポジション、お客様の手元に届く前の最終チェックを行っていることから、社内での信頼も厚い。高校卒業後、医療機器の設計から販売までを担っているという物珍しさに惹かれ、吉田電材工業に入社。元々は機械加工に興味を抱いていたが、品質管理の奥深さややりがいの大きさを今では実感しているという。今日まで、様々な経験を積んできている長谷川さんから、吉田電材工業についてお話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

入社理由

「医療機器の製造・販売」への強い興味

工業高校出身の長谷川さんは、製造業を中心に就職活動を展開していた。複数の会社を見ている中で、高校の先生の薦めで吉田電材工業を訪問するに至ったことが、長谷川さんと同社の出会いである。他の製造業の会社では見たことのない医療機器の製造を行っていることや、その製品を販売しているところに惹かれたと言う。高校生だった自分には関わる機会がなかった医療機器という分野であったため、新しいものに触れたような感覚だったと長谷川さんは振り返る。また、今後、高齢化社会を迎える日本において、必要不可欠なものであると感じ、吉田電材工業の社会貢献性の高さに惹かれたと言う。さらには、誰もが知っているような大手メーカーと取引を行っているということも印象に残っているそうだ。そのような経緯から入社に至った。

やりがい

お客様の「笑顔」と「ありがとう」

「長谷川さんがチェックしているから、いつも不良品がなくて助かってるよ!いつもありがとう!」そんな言葉をお客様からいただけると長谷川さんは笑顔で語る。所属する品質管理部は、同社に入荷するもの、同社から出荷していくものを最終チェックし、欠陥や不良品等が存在しないか、精密に検査をするところだ。「この製品は合格」「この製品は不備があるため返却」とシビアなジャッジメントが求められる。「正直、合格、不合格を出すのは辛いです。しかし、私がしっかりとチェックをすることで、お客様の笑顔が生まれると考えているので、品質管理部の主任というポジションを任せてもらえることは非常に大きなやりがいを感じます」と長谷川さんは語る。また、病院のレントゲンで使用されるカーボン天板の製造を行っているが、出荷の際にはCTスキャンにかけて異物がないことを確認することはもちろん、確認を終えた写真を同封して出荷するなど、品質の追求には余念がない。

より精度の高いチェックを行うことで、さらに喜ばれる存在へ

同社では、お客様からのクレームを何日連続でゼロを記録できるか、ということが1つの目標になっている。語弊を恐れずに言えば、クレームがない会社はこの世に存在しないに等しい。しかし、同社はクレームが発生しない日々をスタンダードと定め、クレームが発生しない日の連続記録を更新していくことが会社の重要な指標となっている。長谷川さんも同様で、この考え方に共感を抱き、自身の管轄下におけるクレーム発生をいかにしてゼロにするかということに尽力している。長谷川さんが担当する品質管理はクレームを発生させないための最後の砦だ。「何を基準にジャッジメントをするか、非常に難しい」と長谷川さんは言うが、難しいからこそ、クレームゼロの日が続けば続くほど嬉しさは増していき、お客様からの信頼もどんどん高まっていく。「よりチェックの精度を上げて、さらに喜ばれる存在になっていきたい」と長谷川さんは言う。

  • 実際の作業風景

  • 医療機器の製造現場

  • 仲間と連携して仕事に取り組む

品質管理を担う長谷川さんに吉田電材工業について聞いてみた

吉田電材工業はどんな雰囲気ですか

みんな本当に仲が良いですね。入社してから現在まで、人付き合いで苦労したことはありません。幅広い年代の方が働いていますが、世代の壁を超えて会話がなされていると感じます。皆さん挨拶がしっかりしていることもそういった良い雰囲気を作る上で重要な要素になっていると感じます。お客様からも挨拶について褒められることがあるんですよ。そういった空気がありながらも、新しい吉田電材工業をみんなで作っていこうという気持ちがあることも嬉しいです。それは社長はもちろん、社全体としても大切にしている部分ですね。最近はこれまでになかった新しい試みなども増えてきていますし、良い意味で緊張感と昔ながらのアットホームさが融合した企業へと向かっていると感じています。

吉田電材工業で働いて、どんなことが身につきましたか

入社以来、責任ある仕事を任せられているため、何事に対しても責任感が増したと思います。常に集中して仕事に取り組んでいるため、学生時代と比較すると、精神的にも強くなり、成長したと感じます。また、「常に考える」という癖が身につきましたね。例えば、製品の検査をしていて、不良品があった場合、製造した人に連絡を取る必要があります。その際、どんな伝え方をすればこういった不良を出さなくなるのか、その人の立場に立って言葉を真剣に考えています。日頃からコミュニケーションをしっかり取って、いかに双方が気持ち良く仕事をすることができる関係を築いておくか、意識しています。

吉田電材工業がさらに発展するために、重要だと感じることはなんですか

当社は様々な部署が存在し、それぞれで高い専門性を有しています。高い技術・知識を持った方も多いですが、ここ数年から定年退職される方が多く、引継ぎ期間が短く感じる場合があり、技術や知識の伝承に不安を感じる事があります。それ故に、今以上に技術・知識の教育や部署間の連携を強め、情報やナレッジの共有がもっとなされるようになると、さらに素晴らしい会社になっていくと感じます。現在では全社的な取り組みとして社内SNSを導入し、今まで以上に密な情報共有を図っています。今後も、当社では新しい取り組みも増やしていきますし、情報共有、ナレッジ共有の精度をより高めていくことが、会社としても大切になります。私自身も一生懸命取り組んでいきたいと思います。

担当者からのコメント

  • 監修企業 担当者

    創業当時から引き継がれてきた「高い技術力」と「挑戦を続ける文化」を大切にしながらも、アイデアを通じて吉田電材工業を更に発展させていくという使命感を持った松本社長のお話には力強さを感じました。 アイデアという目に見えない知的財産を、培われてきた高い技術力と掛け合わせることで高い付加価値のついた製品を作り、発信をしていくことは、今後の日本においても重要なことになっていくと思い、大変感銘を受けました。

掲載企業からのコメント

  • 吉田電材工業株式会社 からのコメント

    この度は当社のような中小企業にスポットを当てて頂き、誠にありがとうございました。世代交代の真っただ中にある当社に対し、取材していただくとともに、貴社の組織改革の事例などもご説明頂き、大変勉強になるとともに有意義な時間を過ごせたと感じています。ありがとうございました。

企業情報

  • 創業年(設立年)

    1940年年

  • 事業内容

    電気機器の製造販売、 合成樹脂(電気絶縁材料を含む)の製造及び加工販売、 医療用機器の製造販売

  • 所在地

    東京都台東区台東3丁目43番6号

  • 資本金

    1,200万円

  • 従業員数

    108名

  • 会社URL

    https://www.yoshida-denzai.co.jp/

沿革

  • 1940年~1999年

    1940年
    東京の神田に吉田電材工業所の開設・創業

    1944年
    株式会社に名称を「吉田電材工業株式会社」と改めて、法人組織に改組

    1960年
    埼玉県三郷市に三郷工場と事務所(後の三郷事業所)を設立

    1973年
    12月に従業員数が100人に達する

    1974年
    新潟県に黒川工場(後の新潟事業所)を設立

    1986年
    三郷事業所が厚生省薬事認定工場の資格を取得

    1997年
    代表取締役社長に松本康男が就任

    1999年
    新潟事業所にて、変圧器組み立てライン構築

    1999年
    6月に、東京本社ビル完成を機に販売拠点として本社内に東京営業所を開設、
    同時に医療機器の販売部門を独立させてメディカル事業部の設置・自社販売の開始

  • 2005年~2014年

    2005年
    薬事法改正に伴い、三郷事業所が「医療機器製造販売業」の許可証を取得し、
    東京営業所も「医療機器製造販売業」の許可証を取得
    また、10月1日に黒川工場を「新潟事業所」に改称

    2014年
    松本康男が代表取締役会長に就任。松本匡史が代表取締役社長に就任

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