日本が誇る伝統と挑戦の革新企業

取材趣旨:企業インタビュー

日本の初代内閣総理大臣、伊藤博文が在任していた頃、足利の地で織物機械の木製部品製作を始めた石井機械製作所。その歴史は135年に及ぶ。時代に合わせて様々な変化を遂げてきた同社は、織物機械の木製部品のみならず、織物機械ジャガード機をはじめとした織物関連機械まで製造できる技術力を身につけた。後に、精密加工部品の事業へと転向し、治工具、省力化装置、専用機、部品製作などの設計から組立までに挑戦し、今では、大型機械部品の製造を強みとしている。飛行機、ロケットなど、高度な技術を要する部品を手づくりで製造する同社。今回お話を伺ったのは、5代目の社長として挑戦を続けている石井大洋社長。小学校の卒業文集に「石井機械を継ぐ」と書くなど、小さい頃から同社を思い続け、社長として同社の発展のために尽力してきた同氏は、今も石井機械を支え、同社の発展と共に、社員の幸せの実現へ向けて力を注いでいる。

  • 株式会社石井機械製作所

    代表取締役社長石井大洋

    お客様に満足を、そして感動を
    創業133年になリます石井機械製作所は、私で5代目になります。 脈々と受け継がれてきたものを大切にして、次の世代に渡すという使命感を持って業務に取り組んでいます。
    「明るく元気にイキイキと」と先代の社長が常に言っていまして、私たちのモットーになっているのですが、私の代ではそれに加えて、 「+(プラス)楽しく」を掲げています。
    私達の自慢は、勤務している方の紹介でご家族の方などが入社してきてくれることです。 お子さん、お孫さん3世代にわたり勤務していただくことが私の1つの夢でもあります。 そのために、うわべでなく心からいい会社だなと思っていただけるように努めてまいります。

目次

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

社風

明るく元気に楽しく

石井機械製作所の工場には呼び名がある。その名も「オーケストラ工場」だ。なぜそのような名前になっているのだろうか。それは、「ハーモニーを唱えて、不調和音を出さずに、社員みんなで同調する。そんな雰囲気の工場でありたい」という想いがあるからだという。石井社長の仕事のモットーは「明るく元気に楽しく」。どこで働くか選べるなら、「明るい雰囲気のところ」「元気が良いところ」「楽しいところ」が良いという至ってシンプルな考えだが、本質を突いているように聞こえた。石井社長によると、このような当たり前のことこそ、疎かにしてはいけない部分だという。それを体現している1つの例がオーケストラ工場だ。名前の通り、ピアノグループ、バイオリングループ、ビオラグループなど、各部門のグループ名もオーケストラに基づいている。巨大な機械を設置している部門はコントラバスグループ、組み立てなど人の協力が大切な部門は、人の輪という意味でホルングループと名付けた。同社はこれからも「明るく元気に楽しく」働ける会社を体現し続ける。

独自性

「来たものは断らない」お客様の最後の砦

来たものは断らず、どんなものでもお客様の要望に合わせて製造する。そんな文化を象徴するように、石井社長は「困った仕事を取ってこい」という言葉をよく使うという。今までお客様の困りごとに応え続けてきた同社は、その過程を通じて技術力が向上し、今では「石井さんに頼めばなんとかなる。最後の砦だ」と数々のお客様から必要とされている。現在は、自社に設計部を設けたことで、仕様書さえあれば、全部パッケージにして製品をつくることができるようになっている。これはお客様のためでもあるが、社員の幸せにもつながっているという。その理由を問うと「お客様に合わせて毎回異なるものをつくるからこそ、飽きることがない。ものづくりが好きな人にはうってつけの仕事」と誇らしげに話す石井社長。量産ではなく、一つひとつ丁寧に手づくりすることにこだわり、お客様からの最後の砦として、これからもお客様と共に成長を続けていく。

展望

利益を出して社員に還元できる会社

「会社を大きくすることは大事なことですが、それ以上に大事にしたいことが『利益を出して社員に還元できる会社』であり続けることです」と力強く話す石井社長。企業にとって最も良い状態を問うと「社員が幸せであること」だという。社員の幸せのために必要なことは、正しく利益を出して、還元すること。そのためには、時代対応が大切であるため、石井社長がよく口にしているのは「お客様があってこその仕事」という言葉。石井機械製作所は自分たちがつくりたいものを売るのではなく、お客様のニーズに応えるということを徹底している。また「海外展開」や「新事業」にも可能性を見出そうとしているのも「社員が幸せになるために利益を出せる会社づくり」に対する一手である。海外に販路を広げていくことや、製造業以外の業種にも挑戦することで、新たなニーズに応えていくことを構想している。「利益を出して社員に還元できる会社」であるために、石井社長は挑戦を続ける。

社員が「明るく元気に楽しく」働ける会社であり続けるために

石井社長が大切にしていることを教えてください

関わる人一人ひとりを尊重することですね。これは時代に関係なく大切なことだと思います。社長としての優先順位は、一番が社員のこと、その次がお客様のことだと考えます。社員を大切にすることで、楽しく仕事ができ、それがより質の高い仕事へと繋がり、ひいては、お客様への貢献にも繋がります。社員に「この会社で働いて良かった」と言ってもらえた時が一番嬉しいですね。正しく利益を出して決算賞与を支給することや、大きな会場を貸し切って忘年会を盛大に行うことなど、社員が「この会社で働いて良かった」と思える瞬間を少しでもつくれるように心がけています。これからも社員一人ひとりが「明るく元気に楽しく」仕事に取り組めるように尽力してまいります。

石井社長のこだわりを教えてください

「石井機械って面白いな」と思ってもらえるような、良い意味で「普通と違った会社」であり続けたいですね。前にも話したように、仕事は「明るく元気に楽しく」が大切だと思いますし、特に「楽しむ」について力を入れています。多くの人からは「工場=昭和っぽい」って思われがちですけど、工場だって現代っぽくした方が仕事をしている時のワクワク感があると思うんですよ。その点で、私が社長に就任してからは、弊社では、作業着を伸縮性のあるデニム生地にして、着る楽しみへの工夫をしてみたり、会社のロゴマークを新たにつくってみたりと、良い意味で、工場っぽくないようにしています。仕事内容だけではなく、雰囲気の面からも「工場の仕事って面白い」そう思ってもらえる会社であり続けようと思います。

さらなる発展のため重要だと思うことを教えてください

私も含め、一人ひとりの仕事へ取り組む姿勢が本当に重要になってきます。業績に繋がるのは、売上の向上に繋がる事業を行うこと、コスト削減をすることの2点ですが、それらを実行しようとする文化をつくることが最も大切です。単純に製品を製造していると思うのではなく、営業の視点を持てるとさらに良くなると思います。「この製品がどれだけの売上に繋がるのか」、「この作業は何分以内で製造できたら良いのか」など、売上とコストへの意識を持ってもらい「自分の仕事はこれだけの価値をつくりだしているんだ」と誇りを持って話せる社員を増やしていきたいですね。社員に高いレベルを求めるからこそ、私自身も自分に対して負荷をかけ、勇気を持った決断をしていこうと思います。

  • 工業地帯に おしゃれな建物を発見! 足利の工業地帯で ひときわ目立つ本社

  • ピアノ、バイオリンなどの 部門があります! オーケストラ工場には 学生も見学にくる おしゃれで整った工場

  • 本社で最初に迎えてくれるのは 社長の愛犬トフィー。 いつも事務所を 明るくしてくれます!

飛行機やロケットをつくる カッコいい仕事

株式会社石井機械製作所 航空・宇宙Gr 営業部 部長 田中武則

飛行機やロケットに欠かせない部品を製造している航空・宇宙Grの営業の責任者として活躍している田中部長。石井機械製作所には、18年前に組立工として入社した。組立工から営業に異動したきっかけは田中部長ご自身の結婚式でのこと。その立ち振る舞いを見た石井社長から「田中は営業が向いていそうだから異動しなさい」という話を受け、営業部に異動。その後、才能が開花し、名古屋営業所の開設を一人で進めるなど、様々な場面で活躍を遂げた。「石井機械は本当に良い会社だと思っています。石井機械で誰かのターニングポイントとなる存在になりたいです」という熱い想いを持ち、活躍している同氏に夢や目標などを伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

入社理由

「営業職」が人生のターニングポイント

「営業職に異動したことが人生のターニングポイントです」と話す田中部長。最初の就職先は、製造業の他社。転職を考えていた矢先に見つけたのが石井機械製作所だという。縁あって同社に入社し、組立工として働き始めた。数年の組立工の経験を経て、石井社長から営業部への異動を命じられたと同時に、「航空宇宙業界に参入しなさい」との大きなミッションをいただいた。これが、田中部長のターニングポイントとなった。そこで、営業の師匠のような存在の方をはじめとした他社の様々な人と出会い、「もともと右も左もわからなかった」という状況から学び続けてきた田中部長。日々進化を重ね、同社の航空宇宙産業の0→1をつくりあげてきた。「もし、息子の友達が『田中君のパパは何をしているの?』と息子に聞いてきたら、『パパは飛行機やロケットをつくって、売っているよ』って誇らしげに話してくれたら嬉しいですね」と笑顔で話してくれた。

やりがい

「誰かに紹介したい」と思える誇りある仕事

「この会社が大好きで、3人も紹介したんですよね」と笑顔で話す田中部長。今では、長い付き合いの友人2人とご自身の弟さんと同じ職場で働いている。「なぜ自分の身の回りの人を同社に誘うのか」と問うと「胸を張れる、カッコいい仕事だから」と誇らしげに話した。学生時代、勉強が苦手でコンプレックスを抱いていた田中部長は、「社会人になってからは人に自慢できる、誇れる仕事をしたい」と考えるようになっていたという。現在従事しているのは、航空宇宙分野の営業。友人にも、家族にも「俺はロケットや飛行機をつくって、売っているよ」と自信を持って話せる仕事だという。田中部長は、自分が新しい仕事を取ってくることをミッションにしており、常に挑戦を続けている。そんな田中部長にとって一番嬉しい時は、「田中に頼んで良かった」「田中がいて助かった」と言ってもらえた時だという。「誰かに紹介したいと思える仕事って幸せですよね」と話す田中部長は、同社をさらに発展させるべく、会社の業績を担い、挑戦を続けている。

「石井機械に入りたい」この言葉を増やす

夢について聞くと、今まで穏やかだった田中部長の表情が真剣になった。「『紹介されなくても、自分からこの企業で働きたいと少しでも思ったことのある企業はありますか?』と聞かれたら、有名なテーマパークとかを思い浮かべますよね。そこと同様に、自社に惹かれて『自分もここで働きたい』と思ってもらえるような会社にしていきたい」と力強く話す田中部長。なぜそんなに高みを目指すのか、その理由はシンプルだった。「この仕事が楽しいから」だという。続けて、「そのような会社になるためには、石井機械にしかないブランドが必要」と話す。そのブランドとはどのようなものなのかを問うと、「足利を航空宇宙関連の街にし、『足利と言えば飛行機やロケット』と言われるようになり、そこの中心に石井機械がいるという状態をつくること」と話した。ブランドがあり、「石井機械に入りたい」と思う人が増えるよう、仲間を巻き込みながら、会社を発展させていく。「子供から『パパの会社に入りたい』と言われたら、たまらないですよね」と話す表情は、笑顔で溢れていた。

  • ロケットや飛行機は ここから始まります! 一つひとつの部品を 真剣に製造しています

  • こまめにコミュニケーションを 取る田中部長 営業から製造まで部署関係なく 関わります!

  • 社員同士の交流も大切に! 定期的に社員で ゴルフコンペを開催中

学び続け、自分を磨き続ける

強みを教えてください

強みは幅広い業種に対応できることですね。うちは、自動車関連、航空宇宙関連、半導体関連、産業機械など、様々な業種の仕事に関わっています。例えば、航空関連のみの仕事だと、航空業界でしか使えないルールに基づいた製品しかつくれず、その業界が傾くとダメージをもろに食らってしまいますよね。うちは、多業種に関わり、汎用性のある仕事ができるので、その点は強みだと思います。ただ、「何でもできる=何もできない」という言葉があるように、多業種の仕事においては、汎用性はあるものの、専門性がないという状況に陥りやすいので、そこは気を付けたいですね。今の仕事一つひとつの専門性を高め、全ての仕事におけるプロフェッショナルになっていきます。

大切にしていることを教えてください

「学ぶために生きる」という言葉を大切にしています。どの生物でも「生きるために学ぶ」ことは必要です。ただ、学んだ先にさらなる幸せや生きがいを感じられる体験をすれば、「学びたい」と思うようになり、「学ぶために生きる」に変わってくると思います。この仕事は、情報が一番の武器になります。お客様の情報を持っていれば、お客様に合わせた話ができて信頼関係を築けますし、ビジネスの情報を持っていれば、商談において有利になります。情報が全ての土台であり、そのためには学ぶことが大切です。初めは、情報が大切だからという理由で読書や専門分野の勉強をしていたのですが、それによってお客様から喜ばれる数が増え、今では学ぶこと自体に楽しさや生きがいを感じています。それが「学ぶために生きる」という意味ですね。これからも学び続け、お客様から喜ばれる機会を増やしていきます。

ご自身の理想の状態を教えてください

誰かのターニングポイントとなる存在になりたいですね。うまくいかなかったことがあっても、何かをきっかけに人生がうまくいくということは、誰に対しても当てはまることだと思います。自分自身、劣等感を感じていたり、仕事にやりがいを見出せていなかったりした時期がありましたが、石井社長が私を営業部に異動してくれたことで、今の自分があります。石井社長のあの決断が私のターニングポイントになりました。出会った人に対し、何かしらの気付きを与えられ、生き方を豊かにできる存在になり、その人の人生のターニングポイントになったと言ってもらえるよう、私自身も日々自分磨きに尽力してまいります。

担当者からのコメント

  • 監修企業 担当者

    この度は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。今回の取材を通じて、貴社が創業から135年間続いているのは、偶然ではなく必然なことだと感じました。石井社長の「社員の幸せが第一」という想いが体現され、田中部長が「家族や友達を誘って一緒に働きたい」と、胸を張れる仕事ができているという点が大変印象的でした。

掲載企業からのコメント

  • 株式会社石井機械製作所 からのコメント

    お話しさせていただいた内容は、普段から社員に発信していることではありますが、改めて第三者の方に話す機会をいただいたことで、その背景など原点に立ち返ることができたと思います。135年間積み上げてきたものを大切にしながらも、新しい挑戦を続けていきます。

企業情報

  • 創業年(設立年)

    1888年

  • 事業内容

    ・自動車関連設備
    ・航空宇宙関連設備
    ・半導体関連設備
    ・産業機械
    ・各種省力化装置
    ・各種精密部品
    ・専用治具
    ・設計製作

  • 所在地

    栃木県足利市福富新町726

  • 資本金

    2,000万円

  • 従業員数

    96名

  • 会社URL

    http://www.iks-web.co.jp/

沿革

  • 1888年~1968年

    1888年
    足利市昌平町にて織物機械の木製部品の製作を開始

    1897年
    織物機械ジャガード機の製作・販売を開始

    1930年
    織物関連機械ドビー機の製作・販売を開始

    1956年
    精密加工部品製造に転向

    1963年
    法人組織に改組し、有限会社石井機械製作所に改称
    資本金200万円で治工具、精密部品専用製作に転換

    1968年
    資本金を400万円に増資
    足利市鉄工団地協同組合に加入

  • 1970年~1982年

    1970年
    足利市福富町御厨工業団地内に3,100平方メートルの土地を取得
    918平方メートルの工場および事務所を建設し、全面移転
    資本金を800万円に増資し、株式会社に改組

    1972年
    設計課部門を設置し、省力化装置・専用機・治工具の製作に着手
    油圧設計機械・部品製作に専念

    1975年
    資本金を1,200万円に増資

    1977年
    製缶加工部門を設置し、材料・製缶・機械加工・組立までの一貫生産体制を確立

    1980年
    組立工場(550平方メートル)および材料倉庫(100平方メートル)を増築
    資本金を2,000万円に増資

    1982年
    製缶工場(400平方メートル)を増築
    隣接地1,000平方メートルに倉庫・駐車場を設置

  • 1983年~1990年

    1983年
    エンジニアリング・設計部門として株式会社和光技研を資本金500万円にて設立

    1988年
    太田市東新町548に太田工場(組立専用)を新設
    敷地2,520平方メートルに組立専用工場および事務所1,105平方メートルを建設

    1989年
    足利市福富新町(木工団地内)に福富工場用地として土地3,300平方メートルを取得し、一部使用開始

    1990年
    足利市大前町にて小型機械部品製造を開始

  • 1992年~2018年

    1992年
    本社工場の隣接地に1,100平方メートルを取得し、小型機械部品の製造専門工場とする

    1993年
    大前工場を本社工場へ統合

    1997年
    太田組立工場を本社隣接地へ全面移転
    新たに3,300平方メートルの土地を取得し、現在に至る

    2002年
    ISO9001認証を取得

    2008年
    JISQ9100(航空宇宙品質マネジメントシステム)認証を取得

    2018年
    新工場M FACTORYを建設
    敷地2,600平方メートル、床面積1,700平方メートル

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