取材趣旨:企業インタビュー
今回取材させていただいたのは、埼玉県南区に本社を構える関東図書株式会社。創業は第二次世界大戦の終戦から3年が経過した1948年。創業から印刷業を軸に事業を展開し、誠実なお客様対応と、高い品質で多くのお客様から絶大な信頼を得てきた。官公庁をはじめ、民間企業における幅広い業界を取引先に持ち、地域に必要とされる企業として健在。近年では印刷業の枠を超え、新しい事業へと挑戦をする。長い歴史の中で、幾度の挑戦を積み重ね、誇りある歴史を築き上げてきた姿はまさに、”伝統と挑戦の革新企業”だ。また、埼玉印刷工業組合の理事長として職務を全うしてきた経験を持つ岩渕社長。今回の取材では、関東図書の在り方や印刷業に対する思い、そして、これからの挑戦を岩渕社長に伺った。
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関東図書株式会社
代表取締役岩渕 均
IT時代を迎えて印刷業界は大変革を遂げています。出版社として創業した当社は今、従来からの印刷・出版に加え、インターネット・データベース・ITソリューションなど総合情報サービス会社となりました。
このホームページでは、当社の営業・制作現場の紹介、お客様の出版物・アートギャラリーなど、当社の業務内容や作品を紹介するほか、年賀状・名刺のネット上での注文、印刷物見積りサイトなどお客様の方から私どもに働きかけることのできる双方向のサイトを作成することにしました。
当社は「日本一安く、日本一親切に」をモットーに仕事に取り組んでいます。“Customer’s Satisfaction”が私たちの合言葉です。どんなことでもお気軽にお声を掛けてくださるようお願い申し上げます。
目次
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
「お客様からの信頼」が築き上げた落ち着いた社風
「落ち着いた雰囲気が社内に流れている」と社風を表現する岩渕社長。創業から72年の歴史の中で、お客様からの信頼をもとに確固たる地位を築き上げてきた同社には、独自の落ち着いた雰囲気が漂う。
その理由は「良いお客様と良い案件に恵まれてきた」と岩渕社長が語るように、幅広い顧客と取引を行うことにより、安定した経営基盤を築いてきたことにある。安定した経営基盤は、働く社員に安心を与え、働きやすい職場環境の創造にも繋がり、長く勤める社員が多い。そのことから、経験豊富なベテラン社員が多数在籍する印刷のプロフェッショナル集団として価値を発揮し続けているのだ。しかし、世の中の変化に伴い、現在印刷業は厳しい向かい風を受けているという。その変化に対し、岩渕社長は「毎日挑戦を続けていかなければならない」と変革の姿勢を持つ。落ち着いた雰囲気を持つ同社であるが、今まさに、プラスアルファとして、挑戦の風土が築き上げられていくのだ。
最高のサービスを実現する最先端の設備力
「お客様に最高のサービスを提供するため、最新の設備を導入し続けてきた」これこそが独自性であると岩渕社長は語る。この言葉の裏には、同社が誇る設備への自信、そして、印刷業界の中で成長を続けてきた秘訣が隠されている。「72年という長い歴史は、時代の変化に対し、挑戦を続けてきたからこそ生まれた」と歴史を振り返る岩渕社長。時代の変化を恐れず、革新的な取り組みで、印刷業界をリードしてきたのだ。例えば、印刷業という枠を飛び越え、Webコンテンツの制作など幅広い領域に挑戦していることからも、その革新性をうかがい知ることができるだろう。その挑戦の中には揺るがない信念がある。それは“お客様に最高の品質を提供し続けること“だ。そのため、「多少、高額な設備でも設備投資を惜しまない」と岩渕社長は語る。近年では、オンライン受注・校正ができるシステムや多言語を自動翻訳できるソフトなどを積極的に取り入れ、時代の変化に対応した挑戦を続けている。すべてはお客様に最高のサービスを提供するため。そのために同社は設備への投資を惜しまない。
”社員が埼玉県で一番勉強する企業”へ
「変化が求められる時代の中でもお客様に最高のサービスを提供し続けていく」と未来を見据える同社。その未来の実現に向けて「社員一人ひとりのレベルアップが必須」と岩渕社長は語る。そのため、会社方針として“社員が埼玉県で一番勉強する企業”と目指すべき企業像を定めた。社員一人ひとりがレベルアップを目指し「会社を引っ張り上げるような社員に成長してほしい」と思いを口にする。”社員全員が指導者”をキーワードに掲げ、社員の目線を上げていく。具体的な方針として、➀資格・検定の取得、②社外の交流を積極的な参加、③新規案件・顧客・技術の開拓、④起業家精神を持つことの4つの行動を促す。変化が求められる時代において、お客様に最高のサービスを展開するため、社員一人ひとりのレベルアップを目指していく同社。岩渕社長の強い思いは、これからの同社において、社員から社員へと紡がれていくだろう。
岩渕社長が描く”未来”
社員に求めることを教えてください
社員全員が指導者のような存在になることを求めています。自らが会社を引っ張り上げるような気概を持って働いて欲しいと思っています。そのために先に述べた4つの方針を実行して欲しいと考えています。その中でも特に、資格や検定の取得、起業家精神を持つことの2点を意識してほしいです。近年ではクロスメディアエキスパートなどの新しい資格が導入されてきました。そのような資格を取得し、社員一人ひとりの価値を高めてほしいです。また、会社を引っ張る人材を増やしてきたいので、起業家精神を持ってほしいです。少し大袈裟かもしれませんが、社員一人ひとりがこのような気概で仕事に臨むことで、当社はより成長していくことができると考えています。
今後の印刷業について考えていることを教えてください
人が築いてきた文化を継承していくために、印刷業の力が必要不可欠だと思っています。近年はインターネットの発達により私達の生活は便利になりました。勉強や情報検索もインターネット上で行われることが多くなりました。しかし、そのような情報の正確性が問題になっています。誰でも情報の発信・書き換えが行えるため、誤った情報や根拠のない情報を取り上げてしまう可能性が高いという懸念があります。このような事象は人が築いてきた文化を正しく継承していくことを難しくします。そのため文化を継承するには、本などの冊子が一番優れていると私は考えています。目に見える形として残り、確かな情報が書籍となってきました。私達はこれからも確かな知識を後世に残していかなければなりません。文化を継承していくために、印刷業は必要不可欠です。
今後目指すべき姿について教えてください
未来永劫、世の中の役に立つ存在であり続けたいです。そのために2つの施策を考えています。1つ目は印刷業の枠を超えたサービスを提供していくこと。2つ目は、印刷業ならではの魅力を発信し続けることです。1つ目の施策では、クロスメディア化を進め、Webコンテンツ作成や、動画作成など新たな領域へと挑戦をすることであり、現在も取り組んでいます。2つ目の施策としては、紙を活用することの不変的な魅力を発信していきます。近年、スマホやタブレットにより、さまざまなものが便利化されてきました。一方で、これまでの形式の方が良かったなどの事象も存在します。例えば、教科書や参考書などを用いた勉強法は効率的であり、これからも残していかなければならない文化です。上記の2つを意識して、今後の発展を目指していきます。
72年の歴史を持つ関東図書株式会社の本社
社員同士で画面を見ながらデザインを議論
多言語ユニバーサル情報配信システム「MCカタログ」を導入
豊富な経験で 会社を牽引

関東図書株式会社 企画営業部第2課 課長 杣木隆浩
今回取材させていただいたのは、企画営業部第2課で課長を務める杣木さん。大学卒業から26年、印刷業に従事し、確かなキャリアを築き上げてきた。「馴染み深く、特別な思いがある埼玉に貢献していきたい」という思いを胸に、14年前に入社。以来、自身の経験を活かし、お客様に対し真摯に向き合い、仕事に取り組むことで、会社の発展を支え続けてきた。また、2018年にクロスメディアエキスパートの資格を取得し、新しい挑戦を続けている。常に成長を追い求め、会社の発展を支えるその姿は、誰もが見習わなければいけないプロフェッショナルとしての鏡である。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
印刷を通じた”地域貢献”
「印刷を通じて、地域に貢献することができる」と入社理由を語る杣木さん。同社への入社は「馴染み深い埼玉県に貢献できる仕事にしたい」という強い思いが源泉。「幼い時からよく絵描きや文字書きが得意で絵本やチラシをよく見ていた」と語るように、幼少期から印刷物に関心があったという杣木さん。このような背景から、仕事は印刷業一筋。大学卒業後は、サービスビューロ会社、プリントシステム開発会社、DTP編集自営業と常に印刷業の第一線で働き続けてきた。そして自営業の時に描いた絵本を関東図書に出版依頼をしたことがきっかけで副会長から入社のオファーを受けたという。埼玉県庁やさいたま市役所などを取引先に持つ同社で働くことで「馴染み深い地域へ貢献できる」と地域に貢献していきたいという心に秘めていた思いに火が着き、入社を決意した。現在は東上線沿線の市報・会報や地元企業の販促物に携わるなど、自分が生まれ育った地域に「印刷」を通して貢献したいという思いを胸に働いている。
無限の可能性を感じる仕事
「読み手に対し、紙で伝えることに奥深さを感じる」と杣木さん。印刷の無限の可能性へ、飽くなき探求心のもと仕事に取り組んでいる。「デザインには無数の手法があり、正解が簡単に見えない」と紙面で伝えていくことの難しさを感じている反面、正解が見えにくいものを追い求めることに大きなやりがいを感じているという。こう語る杣木さんの目は少年のようにワクワクと輝きを放っていた。仕事では「お客様の目線に立ち、何を伝えていきたいのか」「お客様のお客様にあたる人達はどんな人達なのか」などを強く意識するという杣木さん。お客様の目線に立ち、無数にある手法の中で、お客様にとって何が最善なのかを考え続ける。また、最近では紙媒体だけでなく、Web制作や動画制作等、新しい領域についても挑戦し、お客様に積極的に提案を行っているという。世の中のニーズが目まぐるしく変わる時代の中で、常にお客様の目線に立ち、進化を続ける。その姿はまさにプロフェッショナルである。
お客様のパートナーとして
「お客様が気軽に相談できるような存在へと成長としていきたい」と語る杣木さん。「製造業としての印刷業に留まらず、事業領域を拡大させ、多くのお客様にサービスを提供していきたい」と、変革の時期だと強く感じている。そのために「提案力が必要な時代には、常に自分が成長しなければいけない」と語る。印刷物は誰を相手に、何を伝えたいのかという目的に対し、最適な印刷方法や加工はもちろんの事、紙面構成や見出しの入れ方等「伝わる印刷物」の提案を実践している。また最近では、Webサイトや動画制作分野も積極的に営業している。昨今、広告業界で盛んに使われる「クロスメディア」とは、個人に対し柔軟に情報発信するデジタル媒体と、不特定多数に訴求力を発揮する紙媒体との融合により、情報を補完しながら商品購入に繋げる手法だ。「この分野では、当社はまだまだ力不足。だからこそ社内コミュニケーションを大切にし、よりお客様の要望を捕らえて戦略を立て、クロスメディア時代に対応していく必要がある」と語る杣木さん。お客様が気軽に相談できる存在へ、関東図書と杣木さんの挑戦は続く。
埼玉県内市役所の広報誌
最先端の設備を揃える関東図書
杣木さんを中心に営業部内で編集会議
杣木さんから見る関東図書
若手社員へ普段から指導していることを教えてください
簡単に仕事を断ってはいけないことを伝えています。「信頼関係を築くのは一生、壊すは一瞬」その時の感情で仕事を断ると、後悔します。常にお客様の要望に対して最善を考え、努力していく必要があります。そのため、常にお客様の目線に立ち、どう工夫したら要望に応えられるのかを考えるように伝えています。一つの印刷物にはさまざまな工夫要素が存在します。例えば、用紙の種類や大きさの選択、紙面構成、加工の仕方など工夫できる要素が多くあり、一つひとつの作業で工夫を凝らすことで、唯一無二の印刷物を作り上げることができます。そのため、簡単に仕事を断らず、お客様の要望に応えるために考え、努力を続けていくことが重要になります。
杣木さんから見た岩渕社長について教えてください
岩渕社長は新しいことへ挑戦し続ける人です。関東図書の72年の歴史を背負い、社長に就任してから22年、自身の役割を全うされてきました。現在は次の世代に会社を託すため、ソフトウェアやプリントシステムを積極的に導入し、世の中の変化に対し、柔軟に対応しています。また、社員一人ひとりの成長を促すための取り組みなどを積極的に取り入れ、社員一人ひとりの成長を強く望んでいます。埼玉印刷工業組合の理事長を長年務めた経験もあり、印刷業の発展を支え続けてきました。ボランティア活動にも積極的に参加したり、人の役に立つことを忘れず、自身も成長していく姿は一人の人間として尊敬しています。
杣木さんが感じる関東図書の良さを教えてください
一度依頼されたお客様と長い付き合いができることが当社の良さだと思います。お客様の目線に立ち、常に最善を尽くしてきたからこそ、お客様から厚い信頼を得ることができたと思います。また、当社の強みの一つは「ワンストップサービス」として企画・編集から製本までを一貫して行えることです。親切な対応を心掛ける営業部が、制作部のグラフィックデザイナー、エディトリアルデザイナー、レタッチマンらと相談し、お客様の要望に合わせたデザインを作成することができます。また、自社工場である白幡工場を稼働させ、社内で出来た原稿を白幡工場で時間をかけずに印刷・製本をすることができます。このように企画・編集から製本までを一貫して行い、お客様の要望を実現させています。
担当者からのコメント
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監修企業 担当者
今回はご取材させていただきありがとうございました。
当Webサイトのタイトルでもある、”伝統と挑戦の革新企業”にふさわしい関東図書。変化が求められる印刷業界の中で、岩渕社長をはじめ、社員一人ひとりが成長していくという前向きな気持ちを感じました。幾度の挑戦が誇りある伝統を築き上げた関東図書の今後の挑戦に注目です!
掲載企業からのコメント
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関東図書株式会社 からのコメント
今回の取材を通じて、これまでの歴史や今後行うべき取り組みについて、改めて考えるきっかけになりました。今後も会社として発展し続けるため、挑戦することを忘れず、新たな伝統を築き上げていきたいと思います。
企業情報
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創業年(設立年)
1948年
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事業内容
美術印刷、書籍印刷、自費出版 企画、取材、撮影、デザイン、編集、翻訳 データ処理、画像処理、ウェブサイト制作
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所在地
埼玉県さいたま市南区別所3-1-10
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資本金
1,200万円
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従業員数
66名
- 会社URL
沿革
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1948年~1997年
1948年
9月2日設立
芥川賞受賞作品-東野辺薫-「和紙」を出版
石森延男氏の児童読み物及び教育関係の出版を続ける
1951年
浦和市仲町に印刷工場を建設し自主生産を行う
以後、印刷物の受注活動も開始する
1966年
本社及び工場を現在の地に移し、印刷受注拡大を図る
同年、印刷機を全自動に切りかえる
1968年
オフセット部門を設ける
1985年
白幡工場建設(製版設備も設置)
1993年
デジタルプリプレス部門を設置し、フルデジタル化を進める
1995年
デジタル化完成
1997年
デジタル印刷機稼働開始 -
2000年~2014年
2000年
白幡工場が彩の国指定工場に指定される
2001年
ITソリューション事業部開設準備室を設置、IT産業に参入
5月末より県立図書館のデータベース作成作業を開始
2002年
2月末に県立図書館のデータベース作成作業を完成
2005年
プライバシーマーク取得
2006年
埼玉県母子愛育会と当社で共同提案した「マタニティマーク」が厚生労働省にて採用される
2008年
FSC®認証取得(FSC®C008422)
坂東眞理子著「愛の歌 恋の歌」を出版
2009年
消費税アップに伴う「プレミアム商品券」ビジネスに参入
以後、商品券、回数券等の「可変印刷」に取り組む
2011年
自動丁合・中綴じ機を導入
2013年
色の自動測定装置の導入
厚紙印刷に対応の印刷機の導入
2014年
埼玉県多様な働き方実践企業に認定される
取材趣旨:企業インタビュー