日本が誇る伝統と挑戦の革新企業

取材趣旨:企業インタビュー

2014年、15年とノーベル物理学賞を連続受賞したように、日本が世界に誇れる学問の領域の一つ、それが物理学だ。その中でも先進諸国に引けを取らない領域の1つが電磁気学。今回、取材をした電子磁気工業はその電磁気学を応用し、あらゆる部品を傷つけることなく検査する磁粉探傷装置のトップメーカーだ。磁気や渦電流を応用し、部品に傷がないかどうか、物を壊さずに検査する非破壊検査装置。携帯やパソコンなどで用いられる磁石は材料のままだと磁気を帯びていないため、材料の磁石に磁気を入れる着磁装置。目に見えない磁気を視覚化して計測、評価する磁気計測装置。そういった製品を軸に「磁気の専門集団」となるべく今なお挑戦を続ける同社。その児島社長に同社を支えてきたイズムについてお伺いさせていただいた。

  • 電子磁気工業株式会社

    代表取締役児島隆治

    電子磁気工業は1957年の創業以来、磁気の専門集団として、磁粉探傷や渦電流探傷の非破壊検査装置、着磁・脱磁機器、磁気計測機など磁気応用の幅広い分野の製品開発・製造を行って参りました。

    私たちが大切にしていることは、お客様の隠れた声に耳を傾け、時代に先駆けたモノづくりで世界に貢献すること。そして、単に製品をお届けするだけでなく、その先にある安心・安全を形にする磁気のコンサルティング企業であることです。

    今後も開発型企業として最新の技術で未来を切り拓き、お客様のご要望を実現して参ります。

目次

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

社風

まず一人間として信頼される人間であること

同社の掲げる社是は「三つの信頼」である。「お客様に信頼される製品造りをする」「お客様に信頼される人間関係をつくる」「お客様に信頼される会社にする」。「信頼」を大事にするのがまさに同社の社風。そのためにも日々大切にするのは「当たり前の徹底」「コツコツと継続」。社長自身も「当たり前のことをコツコツとやることが一番大事です。それは徹底して日々話していますね」と語尾を強め語るように、納品したらすぐにお客様のもとへ直接伺う、呼ばれたらすぐに対応する。そういった当たり前のことを日々徹底して行っているそうだ。また、「嘘をついたら終わりですから。お客様は絶対に分かりますから」と社長が語るように、お客様に対する働く人間としての姿勢だけでなく、まず一人間としての姿勢を含めた人としての誠実さを重んじる。新卒採用においても、そもそもの人としての誠実さに着眼して面接を行うほどだ。
「当たり前の徹底」「コツコツと継続」「誠実さ」を重んじて、「三つの信頼」を体現しているのだ。

独自性

まずはやってみる、お客様の要望に応えていく姿勢

「うちに卓越した技術があるのか言うと、ハッキリ言ってそんなにないと思う。そうでなく、営業を中心に全社員一丸となってお客様になんとか応えようとする思いが強みですね」と社長。同社の独自性は、何より「お客様の要望に応えようとする姿勢」にある。もし、「できない」と言えばそこでチャンスは終わる。でも、「やってみましょう」と言うこと、少なくとも応えようとする姿勢を見せ続けるからこそ「また頼みたい」「電子磁気工業なら何とかしてくれる」と評判に繋がっているのだ。そういった姿勢があるからこそ、時にお客様から、厳しい言葉をいただくことがあってもまた仕事を頼まれるそうだ。また、要望に応えていくために、チャレンジの姿勢を大事にする。「できるか、できないかをお客様に説明するためにはやってみないと分からないんだから、まずはやってみろと言ってますよ。社長が良いって言っているんだから、どんどん挑戦してもらいたいよね」お客様に応えていく姿勢、これはこれからの時代においても同社の独自性であり続けるであろう。

展望

イズムを守りながら海外へ挑戦していく

「経営理念にも"世界に提供する「安全と安心」"を掲げていますからね。海外進出に挑戦していきますよ」と語る児島社長。海外営業部を1995年に開設し、2003年には上海に合弁会社を設けるなど、着々と海外への攻勢を進める同社。近い将来には東南アジアの方に販売事務所を設立し、日本で造ったものを海外に出したいと考えているそうだ。だが、海外に足を伸ばしても、外国からの輸入で製造をすることはしない。「今までお世話になった協力会社さんの仕事がなくなってしまうので、中国から輸入等もしないですよね」と語る姿からは「信頼」を大切にする同社の心が伝わってくる。「まずは東南アジアに進出したいと思います。北米の方にも進出したいんだけど、まずは東南アジアからだね」日本で造った製品基盤をもとに海外に攻勢を進めていく同社。その歩みの中においても、同社のイズムが変わらぬ軸であるに違いない。

非破壊装置と着磁の分野でプロフェッショナルとなる

会社の一番苦労した時期、それを乗り越えられた要因を教えてください

うちはコツコツとやっていますから、危ない時期はほとんどないですが、流石にリーマンショックの時は危なかったですよ。売上が3割減くらいで。会長が「あと3ヶ月ダメだったら会社を整理するしかない、関係者に迷惑をかけてはいけないから」と話をしたこともありました。そう社員に発信をしたのですが、そこから皆が奮起して頑張ってくれて持ち直しましたね。皆でやれることをやって頑張っていこうと一致団結しましたよね。
私も当時は総務部長で、引っ張らないといけない立場でしたから「会社をつぶしたくないな」という一心でした。 営業は本当に苦しかったと思いますが、会長の「当たり前の徹底」「コツコツと継続」「誠実さ」の姿勢を見てきたこともあって、頑張れたのだと思いますね。

目指すべき未来に向けた目標を教えてください

うちの製品は非破壊装置と着磁の2本柱。これを極めて非破壊装置と着磁の分野でプロフェッショナルとなることですね。そもそも、うちの土台となる電磁学の学問や理論は非常に難しい分野ですけども、この分野をきちんと理解することが、お客様からの信頼感や、お客様に対しての提案力に繋がっていくはずです。
いくら営業が頑張ったってものづくりがしっかりしてなかったら売れないですよ。だから技術力を高めるためにシミュレーションの設備も買って、技術力の向上に励んでいます。競争が激しくなっている時代だから正しい理論で正しい技術を提供する。その技術をしっかりと身に付ける。これができればより良い製品が造れるし、そのお客様への説明の納得力も上がる。「困ったら、電子磁気工業に聞けば良い」とお客様から言われるくらいに力を入れていきたいですね。

御社が成長をしていくために最も大切なことは何でしょうか

人です。人がちゃんとしていれば何でもできるからね。
今の次長・課長などの中間層には、会社を引っ張っていける人間になれるように「当たり前の徹底」「コツコツと継続」「誠実さ」こういった、会社としての根幹の考えをきちんと腑に落としてもらって、体現してもらいたいと思います。若手がきちんと伸びていくためにも、この中間層が鍵であると考えます。
あとは若手の教育。継続して採用活動を行っていますけど、人材教育はまだまだ足りないですね。知識を入れる前の、器の教育が何より大事だと思います。マナーや、心得や、人としての姿勢。そういったものが土台としてあるから、成長していくことができると思います。そういった人材育成に力を入れていきたいですね。

  • 同社を支える非破壊装置

  • 同社の社是「三つの信頼」

  • 進化を遂げようとする着磁分野の装置

何でも可能にするの精神で、 絶対に負けない技術へ

電子磁気工業株式会社 製造部 MG課 主任 大久保憲一

現在、29歳となり、新卒で入社してから入社7年目を迎える大久保さん。その大久保さんが現在行っているのはモーターへの着磁の分野。携帯やパソコン、冷蔵庫や洗濯機など身近な商品の材料に用いられる磁石に磁気を入れる着磁装置を扱う。実は磁気が入って初めてこのような製品が動くようになるのだ。そのモーターへの着磁の分野は同社の事業の中でも、現在成長期を迎え、今後の飛躍が期待される分野でもある。その大久保さんは入社以来「負けず嫌い」の心で、時には意見をぶつけ合いながらも、その積極的な行動力で成長し、現在では同社の未来を担うホープの1人として期待されているという。今回は、大久保さんに、同社での思い、醍醐味について伺った。

伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い

入社理由

偶然の出会いが負けず嫌いの心に火をつけた

「営業職をやりたいなって思って入りました、でもたまたま受けただけですよ」と語る大久保さん。大久保さんと同社の出会いは、偶然のものであった。就職活動をしていた当時、既に研究室にものを納める仕事の内定を持っていたが、校内での営業の様子を見て、心変わり。大学の就職課からの紹介を受け、当時総務部長であった、現在の児島社長との面接を行い同社へ入社する。そして入社後は、大久保さんの”負けず嫌いさ”が成長を後押しした。「仕事がたくさんあって、追いつかないくらいで、それでも私も負けず嫌いなところがありましたね」「入ったからには、この人がいなくなったら困るなって思われるくらいになりたかった」と大久保さんが語るように、とにかく仕事量をこなしてやって頑張ってきたという。その努力の賜物もあり、現在では同社の成長分野であるモーターへの着磁の分野を任され若手のホープとして活躍を期待されている。同社の未来を担う大久保さんの今後が楽しみだ。

やりがい

とにかくまずやってみる、そして実現した時の達成感

「自分がこうだと思ったことをまずやってみること、そのための仮設を立てて、できた時の達成感が醍醐味だと思うんです」と楽しそうに語る大久保さん。大久保さんの扱うモーターは、作成工程の中でのパワーや感度の調節が何より大切になる。その調節のために、磁気にどれだけ磁束密度を持たせるか、どのような配列にするのか綿密な設計を行っていく。だからこそ、仮設とシミュレーターによる計測の繰り返しが大切であり、その積み重ねにより開発の達成に近づけていく。「あとは、仕事がうまくいって、製品を納めた時に感謝されることですね」苦労して自分の造りあげた製品が形になり、納品され、感謝される。その「ありがとうございます」をもらった際には何にも堪え難い感情が浮かぶに違いない。 また、スマートフォンのスピーカーや車のモーターにも使われるなど実は日常に溢れる同社の商品。自分の扱った製品を垣間見る瞬間もまた、ものづくりに携わる人間として何よりの醍醐味だそうだ。

随一の、自分にしかない技術を持つ人材へ

夢は、誰にもできない技術を持った人になること。「会社で特に尊敬している人が上司にいるのですが、知識がすごいですね。だから自分もそうなりたいです」負けず嫌いの思いもきっとあるに違いない。入社当時から抱いている「いなくなったら困る人」になれるよう、積極的に上司と相談をし、関係会社の方と時には激しい意見をぶつけ合いながらも日々、自己研鑽をしている。 「他にも上司のすごいなって思うところが仕事を任す勇気の部分ですね」入社2年3年目の若手であっても積極的に仕事を任せるのが同社の社風。時には、重要な仕事も任されることもあり、逃げ出したい時もあったという。結果うまくいかなかったこともあったという。それでもなお、次も仕事を任せ、若手の成長を後押ししていく。その懐の大きさに感服しているそうだ。「上司に大分助けられましたし、ポイントポイントでサポートをしてくださりますし、すごいなって思います」尊敬するべき先輩のもと、なくてはならない人間になるべく、今日も大久保さんはひたむきに成長を続けていく。

  • 積み重ねた勉強を発揮する製造現場

  • 同社のつくる高性能な磁気評価装置

  • 広々とした活気溢れるオフィス

意見や提案をどんどん言うことができる風土が若手を伸ばす

御社の良いと思うところはどのようなところでしょうか

7年働いてみて感じる良いところは一般社員を含めて、社員から社長までの距離が短いところですね。ワンフロアに全員のデスクがあって、皆のしていることも分かりますし、意見の言いやすさもあります。たとえば、何か問題が起きた時でもすぐに話がいって即時解決していくことは良いことだと思いますし、意見や提案をどんどん言うことができる風土があるのは良いところですね。だから僕自身もすごくモチベーション高く仕事ができますし、勉強になります。他にも弊社は結構、飲みュニケーションを大切にしています。社長も参加するんですよ。そういったこともあって、あまり人が辞めない居心地の良さがあるんでしょうね。

新卒採用に力を入れているそうですね

新卒採用は毎年ずっとやっていますね。私達の代も結構しぶとく残っていますよ。新卒採用の良いところとして、やっぱり若い子が入ると空気も変わりますよね。私も1人新卒を教えましたけど、みんな教科書のことは頭に入っていますけど、人に言う事によって理解が深まったり、やれていないことでも、やっていこうってなりますし、良い刺激になります。
会社としても、新しい人を入れていかないと次の世代に繋がらないですよね。ベテランが抜けていく中でも技術を伝承していかないと続かないですので、きちんと世代を空けずに人の層をつくって入れて、人を教育して継承していかないといけないですね。

これからの会社のために必要なことを教えてください

会社としては絶対に負けない技術をつくりたいってところがあるんですよね。 そのためにも、「何でも可能にする」という精神でやって、お客様の難しい要求に対しても、こだわってやってきちんと応えていけるようにしたいですよね。それが会社を成長させていくと思います。それに、お客様から要望をいただいた時に、頭ごなしに「できない」と言ってしまえば、失うチャンスもあると思います。だから、お客様からの要望があればきちんとデータを集めて、できない時でもできない理由を伝えられるようにしていけるようにやっていますよね。 データを出すことでお客さんも納得してくれますし、信頼感も築け、次に繋がると思います。

担当者からのコメント

  • 監修企業 担当者

    取材に伺った際、まずオフィスの活気に驚かされました。電子磁気工業様もまた、素晴らしい企業で、興味深いお話の数々をお聞かせいただけるだろうと、お話を伺う前に確信致しました。やはり、いざ取材が始まると、出てくる興味深いエピソードの数々。これまで積み上げてきた実績もさることながら、私の印象に残ったのは未来に向けて挑戦を続ける同社の姿勢です。児島社長はよく「変われ」と口にし、社員様はそれに応える、その光景が浮かびました。今後の活躍が見逃せない企業です。

掲載企業からのコメント

  • 電子磁気工業株式会社 からのコメント

    若者の熱意におされ取材を受けてみましたが、良い機会だったと存じております。自社の歴史を振り返ることができたことはもちろん、社員の声を聞くことができ、自分の考えや方針が誤解されずにいたと感じ、非常に嬉しい気持ちになりました。 弊社は磁気という分野で、理論に裏打ちされた本物の技術を伝承していくため、今後もより一層の邁進を続けていく所存です。

企業情報

  • 創業年(設立年)

    1957年

  • 事業内容

    磁気応用製品メーカー

  • 所在地

    東京都北区浮間5-6-20

  • 資本金

    3,600万円

  • 従業員数

    80名

  • 会社URL

    https://www.emic-jp.com/

沿革

  • 1957年~1995年

    1957年 3月
    東京都港区にて創業

    1958年 3月
    本社を東京都渋谷区に移転

    1959年10月
    大阪営業所開設

    1961年 1月
    名古屋営業所開設

    1993年10月
    製造部を東京都北区に移転

    1994年 5月
    本社を東京都北区に移転

    1995年 3月
    海外営業部開設

  • 2003年

    2003年 4月
    上海に合併会社設立

取材趣旨:企業インタビュー

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