取材趣旨:企業インタビュー
令和3年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰における内閣総理大臣賞を受賞し、躍進を続けるヤマダインフラテクノス株式会社。同社は1953年に造船の塗装から事業をスタートした。現在は橋梁、鉄塔の塗装工事をメイン事業とし、国土交通省をはじめ、各自治体や高速道路の老朽化した橋梁の塗装で急成長を遂げている。同社のモットーは「ごみを減らして世界を変える」であり、この精神に基づき、社会基盤を守ると共に、環境改善へ積極的に取り組んできた。山田社長は1995年、社長に就任以降、様々なチャレンジを続けてきた。その功績として、2010年に循環式エコクリーンブラスト工法が国土交通省の運営する「NETIS」に登録され、グッドカンパニー大賞、愛知環境賞、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞、そして前述した内閣総理大臣賞など、名誉ある賞を数多く受賞してきた。今回は数々の輝かしい功績を残してきた同社の代表である山田社長の軌跡、そして同氏が描く会社の未来について伺った。
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ヤマダインフラテクノス株式会社
代表取締役社長山田博文
当社は昭和28年に愛知県知多郡上野町(現東海市)に山田外吉が山田塗装店として創業。以来、原子力発電所建設に伴う塗装工事や建築・橋梁建設に伴う塗装工事に参入し、豊かな未来のために日本のインフラを支え続けることを使命に邁進して参りました。
当社では「ゴミを減らして世界を変える」という精神の基、社会基盤と環境の両方を守る為、研削材を循環させて再利用する循環式ブラスト工法®︎を開発し、環境に配慮した事業取り組みを行なっております。
昨今では、SDGsや脱炭素など持続可能な社会に向けての動きが加速しており、時代は新たなフェーズに入りました。
また、予測不能な大規模自然災害も頻発しており、今後より一層、変化に対応した取り組み方が重要となっております。
「人生に不可能はない」決して諦めない姿勢で取り組んできた歩みをさらに加速させ、時代の変化に柔軟に対応した、様々なソリューションの提案・提供で社会基盤を環境と共に守り、より良い未来を築く為に、組織や事業の枠を超えた変革と挑戦を続けて参ります。
目次
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
やわらかく、温かい雰囲気に包まれている社内
「明るく、コミュニケーションがしっかり取れている会社だと思う」そう社風を語った山田社長。プライベートでは、社員と釣りに行ったりと多くの時間を共有している。山田社長自身、現場から社長に就任しているため、社内で働く社員のみならず、現場の社員とも、数多く現場に出向くことでコミュニケーションを取っている。なぜここまで社員とコミュニケーションを取ることにこだわりを持つのか。それはコミュニケーションを取らず、黙々と仕事をする場であると、若手は委縮してしまい、仕事がはかどらないと考えているからであるという。オンラインの取材であったが、社風を語る山田社長が放つ雰囲気はどこか「頼れる親分」のような印象を受けた。社長自らコミュニケーションを活発に取るからこそ、風通しの良い社風が創出されているのだろう。
チャレンジすることを厭わない。これが同社の独自性
新しい技術にチャレンジでき、特化する技術を持つ。これが同社の独自性だ。多くの試行錯誤をくりかえし、さまざまな挑戦を経て完成した努力の結晶が、循環式エコクリーンブラスト工法の発展型「エコクリーンハイブリッド工法」である。この工法を生み出すにあたり、当時は周りから「考えられない挑戦」、「常識の範囲を超える」と思われるような挑戦であった。この工法はショットピーニングという、無数の鋼鉄あるいは非鉄金属の小さな球体を高速で金属表面に衝突させることで、塑性変形による加工硬化、圧縮残留応力の付与を図る処理がポイントである。この技術は従来、自動車部品のばねや歯車に使われるもので、橋のような膨大な面積に活用することは難しいと言われていたものだ。しかし、そこで諦めず、様々な思考を凝らした結果、誰もが驚く工法を生み出すことに成功した。今回の取材を通して、理想を叶えるために先入観を捨て、ひたむきに努力した山田社長の取り組みについて多くを知ることができ、生まれるべくして生まれた独自性だということを感じた。
良きバトンタッチで永続する企業へ
循環式エコクリーンブラスト工法やエコクリーンハイブリッド工法を、ごく当たり前に使われるスタンダードにしたい。そう山田社長は目標を語った。幼少期から創業者である父の背中を見て育ってきた同氏が、昔から父に言われてきた言葉は「鉄は絶対に錆びる。だから塗装屋はなくならない」だという。父が築き上げてきた会社の土台を1995年に同氏が引き継ぎ、様々なチャレンジを続けてきた。父の姿を見て育ったからこそ、自身が次の世代へ引き継ぐときも新たな土台を築き、安心して任せられる体制を整えることが重要であると意識しているのだろう。循環式エコクリーンブラスト工法が同業界におけるスタンダードになれば、日本にある合計約7万キロの橋を修復または塗装するために、孫の世代まで仕事が続くと考えている。新たな挑戦に取り組み、永続する企業に向けて山田社長のチャレンジは続く。
ヤマダインフラテクノスが大切にしていること
今後、どのような技術があると、ヤマダインフラテクノスは もっと成長できますか?
建設業界も人材不足で悩んでいるため、ロボットを導入したり、その他さまざまな自動化を進めていく必要があると思います。例えば、循環式エコクリーンブラスト工法を自動ブラスト化できるように取り組むとか、いろいろやりたいことはありますね。さまざまなことに挑戦していくうえで若手の入社がひとつのポイントになると思います。そのため毎月のように面接を行い、新しい仲間を増やしています。我々がもっと成長するために、現社員はもちろん、若手の力も借りることで、業界の最先端を走り続けたいですね。
なぜ橋梁部門に参入しようと思ったのですか?
半分勢いです。ブラスト工法が国で採用され、この分野でトップを取ろうと思ったため、迷いはなかったです。そのため、今までやってきた事業を全て廃止し、橋一本でいこうと動き出しました。当時国内では、SDGsやカーボンニュートラルなどは浸透しておらず、欧米などに比べると、やはり環境に配慮されておりませんでした。しかし、いずれ環境が社会的な問題になる時がやってくると思っていたため、ゴミがでない工法の開発に取り組みました。当時から「ゴミがでない工法に対して誰がNOと言うのか」と思っていたため自信を持って取り組みました。世の中に浸透していくにつれ、売上も上がっていったため、これからもより一層注力していきたいと考えております。
循環式エコクリーンブラスト工法の開発をしようと思った経緯を教えてください
創業当時は本当にお金がなかったです。そのため、似たようなものを買ったとしても、それを解体して、もう一度組み立てたりと、使いまわしをして技術を身につけてきました。循環式エコクリーンブラスト工法も「こんな風にやった方がいいんじゃないか」や「どうすれば上手くいくか」など試行錯誤を繰り返し、原型ができました。「誰かがつくるから待っていよう」とか「自分には向いていないからやめておこう」の精神であれば、できていなかったと思います。「誰もやらないなら自分でつくろう」という強い想いを持てたことから完成させることができたと思いますね。
循環式エコクリーンブラスト機械設備
循環式エコクリーンブラスト工法が環境賞環境大臣賞を受賞した時の様子
2018年に建て変わったヤマダインフラテクノスの社屋
ヤマダインフラテクノスの技術を全国へ会社の未来を担う、同社のキーマン

ヤマダインフラテクノス株式会社 SVグループマネージャー 山田康昭
今回お話を伺ったのは、5年前に入社し、現在はSVグループマネージャーとして会社を支える山田マネージャー。ヤマダインフラテクノスの技術に惹かれ入社を決意した若手のホープである。やりがいは「様々な現場を通して勉強ができること」と語るほど勉強熱心な同氏は、入社から5年という短い歳月にも関わらず、グループのマネージャーに抜擢されるほど、山田社長からの信頼は厚い。今回はヤマダインフラテクノスの未来をどう描き、自身がどのように貢献していくのか。山田マネージャーから見る同社について詳しくお話を伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
新技術に惹かれ、入社を決意
高校を中退し、建造物関連の塗装を行う会社に入社した山田マネージャー。ヤマダインフラテクノスの新技術に惹かれ、「自分もこの技術を用いて社会貢献をしたい」という思いを持ち、転職を決意したのだという。前職が同社に繋がりのある会社で働いていたため、度々お手伝いに来ていたという。その際に、古い塗装をはがしてきれいにする技術を知り、「将来はここで働きたい」という思いを抱いたとのこと。また、同社で働く仲間たちと共に仕事を行うなかで、仲間の優しさや温かみに触れ、自身が活き活きと働くイメージがつきやすかったことも入社理由のひとつだという。若いころから憧れていた同社に、見事入社を果たした山田マネージャー。現在はグループのマネージャーとして会社の中核を担っている。
若手の成長が原動力
5年という歳月をかけ、確かな実力を身につけている山田マネージャー。そんな同氏にやりがいを伺うと、プレイヤーとマネージャー、異なる2つの観点から語ってくれた。プレイヤーとしてのやりがいを「様々な現場を経験できることと、毎日勉強ができること」と語った。短い歳月でグループのマネージャーを担うのは相当の努力があってのことだと推察できる。勉強熱心な同氏がここまで成長できたのは、同社に学べる体制が整っており、現場で実践できる機会が用意されているからなのだろう。マネージャーとしてのやりがいは、自分が教えた技術を身につけ、現場の戦力となってくれることであるという。そのためには、口頭で技術を伝えるのではなく、自ら実践して見せることで技術の継承を行っている。プレイヤーとして確かな技術を持ち、それを包み隠さず継承する山田マネージャーの存在は、若手にとって頼れる存在であることは間違いない。
新事業の基盤を創る
ヤマダインフラテクノス自慢の技術、循環式エコクリーンブラスト工法。この技術は、近年スポットがあたっている環境問題に対し、積極的に取り組むうえで必要な技術であることは明白である。しかし、開発からまだ10数年であるため、知名度としてはまだまだ課題に感じているという。山田マネージャーは今以上にこの素晴らしい技術を全国へ広めるために、「今以上に会社へ貢献する」と意気込んでいる。目指すものは、日本一や世界一であり、自身もその過程に携わりたいのだという。一方、プライベートでは3人の子供がおり、「子供の成人式を見届けたい」と子供への愛も深いため、子供を見守っていくうえで健康や安全意識の面において、より注力していくという。今後も会社の成長に貢献したいと意気込む同氏の挑戦は、まだまだ続いていく。
ミーティング風景
山田マネージャーが仲間と談笑する様子
社員への指導も欠かさない
ヤマダインフラテクノスの未来を担う山田マネージャーの想いとは
山田マネージャーから見た山田社長の印象を教えてください
とても器の大きい人です。何でも意見を取り入れてくれて、全てを包み隠さず発信してくれるので、信頼している社員は多いと思います。私は山田社長に惹かれたことも入社に至った一因でした。実は自分が施工した現場で失敗し、会社に迷惑をかけた経験があるんですよ。当時の専務にはこっぴどく怒られてしまいました。怒られて当然の大きなミスでしたから。その時に山田社長が「勉強になっただろ?これからいろいろな現場を経験すると思うから、そこで取り返してくれ」と声をかけてくださいました。あの時は気持ち的にも楽になりましたし、もっと頑張ろうという気持ちになりました。
業務を行う上で大切にしている取り組みを教えてください
現場をきれいに見せることを心掛けています。全体をまとめて行うのではなく、一つひとつ丁寧に取り組み、中途半端な作業にならないようにしています。マネージャーとしては、部下としっかりコミュニケーションを取ることを意識しています。「おはよう」とか「朝ごはん何食べたの?」など、軽くコミュニケーションを取ることが多々ありますね。やはりコミュニケーションを取らなければ、若い社員が自分に対して意見があったとしても言いづらいと思うため、言いやすい環境をつくれるように意識しています。
これからヤマダインフラテクノスに入社する社員へメッセージをお願いします
自分が持っている技術は包み隠さず全て指導させていただきます。社内にも安心して勉強のできる環境も整っているため、全く畑違いの業界で働ていたとしても、安心して入社していただければと思います。会社の雰囲気と業務のやりがいをお伝えすると、まず会社の雰囲気は、和気あいあいとしており、家族のような温かい雰囲気に包まれています。アットホームな会社だと感じますね。業務のやりがいは、年季の入ったところがきれいになり、目に見える形で達成感を感じられます。ぜひ求職者の方にはヤマダインフラテクノスを一つの候補として考えていただけますと幸いです。
担当者からのコメント
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監修企業 担当者
本日は取材をお受けいただき、誠にありがとうございました。山田社長の先見の明で新技術を開発にいたったことは非常に感銘を受けました。また山田社長のみならず、山田マネージャーも、その技術を広めるためにチャレンジしていきたいということを伺い、会社に一体感が生まれ、これから更に成長する企業だと確信致しました。ヤマダインフラテクノス様のこれからの活躍を陰ながらファンの一人として応援させていただければと存じます。
掲載企業からのコメント
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ヤマダインフラテクノス株式会社 からのコメント
この度は、取材をしていただきありがとうございました。取材を通じて我々が今後目指すべき姿、そして何を大事にしてきたのかを振り返る良いきっかけになりました。新技術の開発には成功しましたが、まだまだ歩みを止めるわけにはいきません。これからも弊社はチャレンジし続けますので、どうか皆様には成長を見守っていただけますと幸いです。
企業情報
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創業年(設立年)
1953年
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事業内容
各種塗装工事
とび・土木工事
防水・その他 -
所在地
愛知県東海市名和町二番割中5-1
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資本金
2,000万円
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従業員数
124名
- 会社URL
沿革
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1953年~1995年
1953
ヤマダインフラテクノスの前身「山田ペンキ」を山田外吉によって創設
主に旧名古屋造船にて造船の塗装に携わる
1960
海市上野に本社を移転
旧東海製鐵の建設工事に関わる
塗装工事に参入
1965
法人会社 山田塗装株式会社を創立
1969
東海市名和町に新社屋完成
1975
力発電所建設に伴う塗装工事に参入
1985
原子力発電所定期検査に伴う塗装に参入
1995
山田博文が社長に就任
建築部門・橋梁部門に参入
リサイクルブラスト装置 考案・開発 -
2005年~2021年
2005
エコクリーンブラスト装置 開発
2010
環式エコクリーンブラスト工法 国土交通省「NETIS」登録
2015
国土技術開発省「地域貢献技術賞」受賞
「ヤマダインフラテクノス株式会社」に社名変更
2016
グッドカンパニー大賞 受賞
「一般社団法人日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会」設立
2017
愛知環境賞 優秀賞 受賞
「チュルイチョンバーブリッジ・日本カンボジア友好橋」施工開始
約60万㎡施工実績
2018
第45回環境省・環境大臣賞 受賞
現新社屋完成
2020
第10回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞
審査委員会特別賞 受賞
2021
リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰
内閣総理大臣賞 受賞
取材趣旨:企業インタビュー